卒業研究

3年生の皆さんへ(2017年度研究室配属に向けて)

研究室名

物性理論研究室 (Theoretical solid state physics group)

指導教員

大槻 東巳 教授

研究指導協力者

和田 未来 (D2)

定員

3-5 名

卒業研究の課題と内容

本研究室の卒業研究では、コンピュータシミュレーションを使って、固体中の現象を理解してもらいます。
ミクロなメカニズムから出発して、マクロな現象を理解する手法が統計力学で、それを応用して現実の物質を理解するのが物性理論です。 こうした自由度の極端に大きな系では、解析的な計算が一部の問題を除いて不可能ですが、幸い近年のコンピュータの発展により、コンピュータシミュレーションを行うことで、非常に多くの事柄が急速に分かるようになりました。本研究室では、特にミクロとマクロの間のメゾスコピック系の物理をテーマとして、コンピュータシミュレーションを駆使した最先端の理論物理に触れてもらいます。
具体的な研究テーマは、皆さんの進路や興味・関心(それと能力)を見極めた上で決定します。

ゼミ

ゼミは前期、後期とも週 2 回です。 前期は固体物理の簡単な教科書を、後期はメゾスコピック系に関する教科書を読みます。 どちらも輪講形式です。 ゼミと平行して、前期は簡単なコンピュータシミュレーションの課題を与え、計算機に慣れるようにします。 後期はもちろん、卒研の課題に取り組むことになります。

Q&A

Q:コンピュータでプログラムを書けなければきついのでは?
A:心配はいりません。
 プログラミングが得意な学生(滅多にいません)はもちろん、相応の結果を出していますが、 受け持った卒研生の多くはゼロから始めてかなりの結果を出しています。 物理に対する興味と、コツコツ努力する姿勢があれば、スタート地点の差は問題ではありません。


Q:コンピュータができれば、物理がわからなくても大丈夫ですか?
A:あくまで理論物理学の一環としてのシミュレーションなので、 基本となる物理がわかっていないと苦労するでしょう。 ただ、勉強する時間は十分にあるので、努力する気さえあれば怖がる必要はありません。 何にウェイトを置くかは個別の事情も考慮するので、相談してみて下さい。


Q:何を履修しておけばよいですか?
A:物理系の基礎科目(力学、電磁気学、量子力学、統計力学)と基本的な数学(微積分、線形代数、統計学)は全て勉強しておいた方が良いでしょう。


研究室の様子

研究室の風景


輪講:交代で教科書を読み、その内容を発表します。
自分が理解するだけでなく、わかりやすく人に伝えることも大切です。


わからないことは質問しましょう。大槻先生の愉快なお話も聞けますよ。

研究室での暮らし

卒研生のために専用の研究室が用意されており、 各自に机と研究用PC (新しいMac)が貸与されます。 教育指導はきっちりと行いますが、生活スタイルに関しては基本的に自由で、 研究室に泊まり込む人もいれば、PCを持ち帰って家で勉強する人もいます。 ただ、できれば毎日決まった時間に研究室に来る習慣をつけた方が良いでしょう。
前期はゼミの課題(数週に1回、1週間ほどかけて準備)さえしっかりこなしていれば、 受験勉強をするのも就職活動をするのも自由です。 もちろん、課題は中途半端、研究室にも来ない、という学生には厳しい結果が待っています。
後期は主に、卒研のためのコンピュータシミュレーションに取り組むことになります。 仲間と協力し、また先生や先輩の指導を仰ぐことで、研究への取り組み方を学んでください。

3年生までにきちんと単位を取ってきた人にとっては、ほとんどが「自由時間」となります。 社会に出る一歩手前の1年間は大変貴重です。 自ら考えて積極的に行動しないと、1年後には大きな差がついてしまうことになりますよ。

大槻研年間スケジュール(見込み)

3月末頃 大掃除
4月初頭 今後の予定・ゼミ日程決定
4月後半 新入生歓迎会
7月末頃 前期課題提出
8月9月 夏休み
11月頃 卒業研究本格始動
12月末 忘年会
1月前半 卒研予稿提出
2月前半 卒研発表会
3月末迄 卒業論文
詳しく

研究室選びのアドバイス:理論研の選び方

上智大学の理論物理学グループには大槻研の他に高柳研と平野研がありますが、その3つをあわせて「理論研」と呼んでいます。 もちろん研究テーマはそれぞれ異なりますが、研究・生活スタイルや進路は似たり寄ったりです。 理論研合同で新歓や忘年会などのイベントを行う、大学院生は共同の「理論研院生部屋」に居る、など1つのグループとしての性質も持っているので、 研究室選びの際は考慮に入れておいて下さい。

卒業後の進路

就職先はメーカー系(研究開発)が主ですが、次いでIT系(SEなど)、銀行/証券会社系などが多くなっています。 大学院(修士課程)に進んだ場合も同様です。専門知識というよりは、研究を通して身につく科学的・論理的思考力、問題解決力、そしてコンピュータスキルが活かされることになります。
博士後期課程に進み、そのまま学問の道を歩むことも可能です。(※2014年度から上智の大学院の授業料が大幅に安くなっています)

向き、不向き

もちろん例外はありますが、基本的には自分の研究を自分のペースでコツコツ進めることができる「文化系」の人に向いています。 特に、「もっと物理を学びたい」という気持ちがある人には理論研がおすすめです。 逆に、勉強が極端に嫌いな人、考える事が嫌いな人には向きません。 理論物理学と聞いて「頭が良くないから無理」と遠慮してしまう人も多いようですが、 理論研究は真面目に地道に考え続けることが重要なので、90分間の筆記試験で求められる頭の回転の速さや、暗記能力は必須ではありません。 また理論研究の性質上、卒業研究レベルだとどうしても初歩的な問題から取り組むことになります。 今すぐ最先端の研究に触れたい、大発見をして一発当てたい、という人は他を当たった方が面白いかもしれません。

理論研の利点(主に生活面から)

・体力が無くても大丈夫
実験系の研究室だと、早朝から深夜まで/泊まり込みで/徹夜で/1週間家に帰らず 実験をする、といった体力勝負が必然的に求められる場面もありますが、 理論研ならば普通に真面目にやっている限り 泊まり込むような事態にはなりません。 むしろ、規則正しい生活をして十分な睡眠時間をとり、頭をしっかり働かせましょう。 自分のペースで研究を進められるため、体力に自信の無い女子学生でも安心です。 実際、女性の占める割合が30%(2010-2015年度平均)と、物理系の研究室としては女性比率が高くなっています。


・不器用でも大丈夫
実験器具の扱いに失敗すると、金銭的な損害(100万円単位)を与えたり、最悪の場合、自分や周囲の人を危険にさらす場合もあります。 理論研究ならば、失敗しても他人に迷惑を掛ける心配はありません。


・迷っても大丈夫
理論研の卒業研究では研究に必要な基本的な事柄(現代科学の基礎)を学べるので、つぶしがききます。 例えば2009-2013年の4年間では理論研を出た人の半数以上が大学院に進学していますが、うち約3割は実験の研究室です。 大学院に進む際、理論研内部で指導教員をかえる事もできます。 なお、理工学部他学科からも学生を受け入れています。(2013年度実績:物質生命理工学科より2名)