研究紹介

物性理論とは?

 物性理論とは、我々の身近にある物質の性質を量子力学や統計力学といった現代物理学の手法を使って理論的に解明する学問です。 学生の皆さんを含めた一般の方々にとって、物理学と言えば「宇宙」や「素粒子」といった言葉が浮かぶと思いますが、 実は「物性物理学」は現代物理学の中で非常に重要な位置を占める分野です(素粒子・原子核・宇宙の3分野合計よりも、物性物理学者の方が多い)。 これには、近年の微細加工・観測技術の向上により、物質中のミクロな世界で起きている面白い現象が観察・制御できるようになってきた、という背景があります。 例えば最近では、巨大な粒子加速器(国家予算)を使わなければ見えないと思われていた相対論的粒子が、 実は「鉛筆の芯をセロテープで剥ぎ取ったもの」(グラフェン。特別な装置が無くても作れる)の中で観察できることがわかったり、 これまでに知られていた金属・絶縁体・半導体のどれにも属さない、とても奇妙な性質を示す新しい種類の物質(トポロジカル絶縁体)が見つかったりと、 学術的にも産業的にも重要な新発見が相次いでいます。
 こういった未知の現象を手がかりに物理学の根本に迫る基礎物理学的なアプローチ、 特殊な性質を活用して全く新しい技術を生み出す応用物理学的なアプローチ、 物性理論では、その両方が精力的に進められています。

研究の概要

 大槻研究室では、メゾスコピックなスケールの物質で起きる伝導現象、量子輸送現象の研究を行っています。 メゾスコピックな系では量子力学的な干渉によるアンダーソン局在(画像)効果のため、 系の持つ「乱れ」(格子欠陥や不純物など)の配置が大きく効いてきます。 (マクロな系では自己平均化される。) そのため、伝導度などの物理量は一見すると試料ごとに全くランダムな値をとるように見えるのですが、 統計的な処理を加えるなどして詳しく調べてみると、例えば伝導度の分布関数、局在長の臨界指数など、 「系の詳細には依らず、基本的な対称性のみによって決定される普遍的(universal)な値」に出会うことがあります。 そのような普遍的な振る舞いが一致する物質は(一見全く異なる物質であっても)同じ仲間であると考えて、 普遍的な振る舞いのタイプによって分類することにより、 物質の示す様々な現象の下に隠された、より本質的な物理を明らかにすることを目指しています。 それに加えて最近では、深層学習(ディープラーニング)を用いた量子相転移の研究も行なっています。


キーワード

アンダーソン局在、量子輸送現象、量子相転移、トポロジカル絶縁体(リンク先は乱れのあるトポロジカル絶縁体の表面状態)(量子ホール系、量子スピンホール系、Z2トポロジカル絶縁体、トポロジカル超伝導体)、ディラック電子系(グラフェン、ワイル半金属、ディラック半金属)、ネットワークモデル、転送行列法、パーコレーション、マルチフラクタル、機械学習、深層学習


論文リスト(大槻東巳)

学内共同研究

当物性理論研究室では、光物理実験研究室と連携し、光のアンダーソン局在に関する学内共同研究を行っています。


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