【研究内容】 逆散乱問題の研究
量子力学では一般にポテンシャルが与えられると、シュレディンガー方程式を解くことで散乱波が求まり、観測量である散乱振幅や位相差を与えることができる(順問題)。 逆に、観測量である散乱振幅や位相差の情報からポテンシャルの形を推論する問題(逆問題)を逆散乱問題という。
本研究では、量子力学的弾性散乱における逆散乱問題を運動量空間で扱うことにより、以下の結果を示した。
1. 一般に、(非局所性を持っていても良い)エルミートなポテンシャルVが作り出すhalf-on-shellのT行列が満たすべき必要十分条件を示した。
2. 次に、その条件を満たすhalf-on-shellのT行列に対応するuniqueなエルミートポテンシャルを構成する手順を示した。
3. 以上により、on-shellのT行列を固定して、その条件からhalf-on-shellのT行列を求め、さらに対応するポテンシャルを求めるという逆散乱問題の解法を示した。
実際に数値計算により以上のアルゴリズムが正しく逆散乱問題の解を与えることを示し、その結果に対する考察を行った。