物理学科コロキウム 講演要旨(敬称略)

これまでの講演(敬称略)


物理学科コロキウム
 

日時 2005年1月13日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 Gerhard Boerner (Max Planck Institute)
題目 A Universe full of Dark Mysteries
講演要旨
In recent years astronomical observations have revealed that the expansion of the Universe is accelerating. This requires the existence of a constant or nearly constant energy density. This so-called Dark Energy is also measured in a detailed analysis of the anisotropies of the Cosmic Microwave Background. In many respects this quantity is still quite mysterious. In addition there exists also Dark Matter, and overall the known baryonic matter comprises only 5 percent of the total, 95 percent is unknown. In the talk the observations leading to these strange conclusions will be discussed, as well as some ideas for explaining them.

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物理学科コロキウム
 

日時 2004年12月16日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 中村 信行 (電通大レーザー新世代研究センター)
題目 電子ビームイオントラップ(EBIT)を用いた多価イオン研究
講演要旨
原子から多数の電子が剥ぎ取られ、残っている電子がごく少数であるようなイオン、多価イオンは、中性原子や通常のイオンとは異なる多くの興味深い現象を示す。例えば、多価イオンに残されている電子は原子核のごく近くで強いクーロン場を感じながら光速に近い速度で運動しているため、そのエネルギー準位には中性原子では無視できたような相対論的効果や量子電磁力学的効果が顕著に現れるようになる。また、多価イオンは「サブナノ」のサイズでありながら数10〜数100keVにも及ぶ内部エネルギーを有するため、固体表面に局所的な改質をもたらすなど応用的な側面からも注目されている。このような多価イオンに関して、生成原理、現在行われている研究、将来の展望などを紹介する。

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物理学科コロキウム
 

日時 2004年12月9日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 太田 滋生 (高エネルギー加速器研究機構)
題目 スーパーコンピューターによるハドロン物理学の第一原理厳密計算
講演要旨
自然界の4種の基本相互作用(重力・電磁気力・弱い力・強い力)のうち、強い力に感応する素粒子をハドロンとよぶ。これらはみなより基本的な素粒子であるクォークから構成されている。クォークに働く力はグルーオンと言う素粒子に媒介されていて,それを記述する基礎理論を量子色力学(QCD)と呼ぶ。QCDは今年のノーベル賞を受賞した漸近自由性という著しい性質があるが、これと楯の両面をなすのがクォーク閉じ込めである。すなわち、ハドロンからクォークを分離して取り出すことは出来ない。この現象を過不足なく完全に記述するのが格子量子色力学の枠組みであり,これを専用に開発したスーパーコンピューターと組み合わせ,第一原理厳密計算を行うと、なぜ我々は反物質ではなく物質から構成されているのか、なぜ我々の生存にかかせない諸元素が適切な量存在するのかなどの疑問にさえ答えることが出来る。

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物理学科コロキウム
 

日時 2004年12月2日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 勝本 信吾 (東大物性研)
題目 メゾスコピック系物理 -- 量子世界のガリレオ --
講演要旨
20世紀も終盤にさしかかった頃始まった「メゾスコピック系」の物理学によって,量子力学のおもちゃを実際に組み立てて遊ぶことができるようになりました.まず,どんなおもちゃを作って,どうやって遊んでいるのかお教えしましょう.最初のうちはそれだけでもみんな十分面白がっていましたが,その内,これで,まだ良くわかっていないことを調べてやろう,という人が出てきました.ガリレオの登場です.現代のガリレオたちは一体どんなことを調べているのか,一つの例をお話します.

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物理学科コロキウム
 

日時 2004年10月7日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 佐々木 孝彦 (東北大金研)
題目 強相関有機伝導体で見られる金属-絶縁体相分離の実空間イメージング
講演要旨
近年,銅酸化物やマンガン酸化物などの遷移金属酸化物や有機電荷移動錯体などの強相関電子系において電荷が自発的に実空間上で整列秩序化する「ストライプ秩序」,「電荷秩序」や「本質的不均一」,「ミクロ相分離」などと呼ばれるナノメータースケールの電子相分離現象が注目を集めている.これらの現象は2元系金属合金における2相共存による相分離とは異なり化学組成の同じ構造上で強相関電子が整列秩序化したり,電子状態が異なる複数の相が空間的に共存したりしている.本コロキウムでは,2次元有機強相関電子系として最も精力的に研究が進められているκ型BEDT-TTF系有機伝導体のモット金属-絶縁体相転移近傍で実空間可視化されたマイクロメータースケールの金属-絶縁体相分離現象について紹介したい.

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物理学科コロキウム
 

日時 2004年7月15日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 Boris Shapiro (Dept. Phys., Technion, Israel)
題目 Multiple Scattering of Light in Dielectric Media with Disorder
講演要旨
Electromagnetic waves, propagating in a disordered dielectric medium, undergo multiple scattering from the inhomogeneities. As a result, a complicated spatial intensity pattern is established in the medium. It is commonly referred to as a “speckle” and, due to its complexity, it should be characterized in statistical terms. Intensity correlations in speckles will be discussed and some examples will be given, including speckles in disordered photonic crystals.

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物理学科コロキウム
 

日時 2004年5月27日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 大島 忠平 (早稲田大応用物理)
題目 コヒ−レント電子波の発生とその応用
講演要旨
過去半世紀にわたって、電子波のコヒ−レンス(可干渉性)は変化しなかった。固体の特殊な原子構造・電子状態(ナノ構造や超伝導状態)を利用して、縦コヒ−レンス長を20倍、横コヒ−レンス長を100倍以上向上した電子波ができることを示す。 また、この新しい電子波の応用も議論したい。

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物理学科コロキウム(理工学部共催)
 

日時 2004年5月20日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 矢花 一浩 (筑波大物理)
題目 光応答の量子シミュレーション
講演要旨
光と物質の相互作用で起こるさまざまな多電子ダイナミクスを記述する第一原理的な量子シミュレーション計算について紹介する。時間に依存するKohn-Sham方程式から出発し、それを実時間・実空間で解く方法を示す。そして弱い光に対する分子や固体の線形光応答や、強光子場中での分子のイオン化過程などへの応用を紹介する。

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物理学科コロキウム(理工学部共催)
 

日時 2004年5月13日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 宇治 進也 (物質・材料研究機構)
題目 有機伝導体における磁場誘起超伝導
講演要旨
有機伝導体 ラムダ-(BETS)2FeCl4は2次元BETS分子配列とFeCl4分子配列が交互に積み重なった構造を持つ2次元電子系である。通常の超伝導体は、磁場中では超伝導状態は不安定になり、臨界磁場で超伝導は破壊される。ところがこの有機伝導体では、伝導面に正確に平行に磁場をかけると、低磁場の絶縁状態から金属状態へと転移(約10.5T)した後、17T付近から超伝導状態へと転移する。この磁場誘起超伝導転移のメカニズムについて解説し、さらに、Feを非磁性イオンであるGaへと置換することによる磁気相図の変化を議論したい。

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物理学科コロキウム(理工学部共催)
 

日時 2004年5月6日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 全 卓樹 (高知工科大)
題目 量子そろばん:量子的点状相互作用と量子計算
講演要旨
量子状態を情報処理に用いる事で、従来より格段に強力な計算や暗号が可能になることが、理論的には久しく知られていた。ここ10年程の実験の進展によって、それが現実に実現可能であることが示され、量子計算はいまや物理学の先端分野の一つとして脚光を浴びている。
この講演では、講演者自身によって考案された、一次元上での波動函数の位置を量子的ビットに用いる「量子そろばん」の概念を縦糸にして、量子暗号、量子計算、量子テレポート等の量子情報のトピックスを入門レベルから概観したい。
参考文献、サイト:
T.Cheon, T.Fulop and I.Tsutsui, "quantum abacus", arXiv.org
quant-ph/0404039.
http://www.mech.kochi-tech.ac.jp/cheon/q-inf00.html

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物理学科コロキウム(理工学部共催)
 

日時 2004年4月22日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 新田 淳作 (NTT物性基礎研)
題目 半導体中のスピン軌道相互作用の制御とスピン伝導現象
講演要旨
スピンをはこれまで磁場により制御されてきました。我々は、InGaAs系二次元電子ガス中の反弱局在解析により、スピン軌道相互作用がゲート電圧によって、電気的に制御可能であることを実験的に示しました。この結果をもとに、スピン干渉デバイスやスピントランジスタの動作原理と実験の現状を紹介します。

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物理学科コロキウム
 

日時 2004年1月15日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館448室
講師 佐藤 哲也 (海洋科学技術センター)
題目 未来を語る地球シミュレータ
講演要旨
シミュレータとは自然の法則やゲーム(人工)の法則に従って発展する集団(システム)の振る舞いを模擬する(スーパー)コンピュータである。その中でも地球シミュレータは地球環境の変化を予測する"仮想地球"シミュレータである。地球シミュレータのスーパーコンピュータとしての性能は世界で最も勝れたものであり、世界中の研究者がのどから手が出るほど使ってみたいシミュレータである。この地球シミュレータが働き出したのは昨年(2002年)の3月であり、4月にはそれまで世界の最高速といわれていたアメリカのアスキーホワイトというスーパーコンピュータの5倍の計算速度を出し、ニューヨークタイムスの第一面に取り上げられ、"コンピュートニク"というあだ名をつけられた。これは全ての高性能技術において常に世界一を自認するアメリカが1957年の旧ソ連に先を越されたスプートニク人工衛星をもじってつけられたあだ名である。
この1年半の間に気候変動、地震、ナノ、バイオなど様々な分野で画期的な成果が出ており、今後もどんどん出てくる予定である。
この地球シミュレータの出現は、地球環境変動の予測のみならず、産業界における新しい画期的な製品や技術を低コストで開発する非常に効率の良い新製品製造マシンである。産業界における製造革命をひき起こすパワーをもっている。例えば、自動車を丸ごと地球シミュレータ上で開発する"仮想自動車"にも使うことができる。あるいは、"仮想核融合装置"において核融合炉への道を安全にたどることもできる。
講演においては、地球シミュレータで得られた成果を示しながら、シミュレーション文化が新しい希望ある未来の社会の建設にどれほど大きな貢献をしていくかについてお話しする。

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物理学科コロキウム
 

日時 2003年12月11日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 山崎 泰規 (東大院総合)
題目 超低速反陽子の生成とその展開:原子物理学の立場から
講演要旨
現在開発を急いでいる超低速反陽子ビーム生成の現状と、それによって可能となる反陽子原子や反水素の生成と分光、及び、関連して拓かれるであろう科学の領域について議論する。
1.反陽子の歴史、
2.超低速反陽子の生成
3.これまでの反陽子関連研究、
4.有用な反水素生成法
5.反物質の拓く科学

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日時 2003年11月27日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 福山 秀敏 (東北大学・金属材料研究所)
題目 物性物理学研究の流れと分子性結晶の物性
講演要旨
半導体から銅酸化物高温超伝導に代表されるドープされたモット絶縁体にいたる物性物理学研究の流れを概観し、最近活発になっている分子性結晶に関する研究の話題を紹介する。

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物理学科コロキウム
 

日時 2003年11月20日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 高崎 史彦 (高エネルギー加速器研究機構)
題目 粒子―反粒子対称性の破れ
講演要旨
粒子―反粒子対称性の破れはK-中間子崩壊過程の中で1964年に発見された。1973年には、小林―益川の両氏によりこの現象をクオークの混ざりを使って説明する仮説が提案された。一方、粒子―反粒子対称性の破れを示す事例は以降発見されないで今日まで来た。2001年には、高エネルギー加速器研究機構でのBelle実験によりB中間子の崩壊の中に、新たに粒子―反粒子対称性の破れが発見された。これは小林・益川仮説を実証するものである。一方、最近、Belleグループは、新たに、小林・益川理論のみでは説明できにくい現象を観測した。このセミナーでは、粒子―反粒子対称性の破れを含む初歩的な解説とKEK−B−ファクトリー計画の概要、及びBelle実験の結果について初歩的な解説を試みる。

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物理学科コロキウム
 

日時 2003年11月13日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 松本 正茂 (静岡大学理学部)
題目 スピンダイマー系における磁場・圧力誘起磁気転移
講演要旨
TlCuCl3, KCuCl3, NH4CuCl3は同じ結晶構造をとるスピンダイマー系物質である。しかしながら、それらが示す磁化曲線にはバラエティーがある。特に、NH4CuCl3では飽和磁化の1/4と3/4のところに磁化プラトーが現れる特徴がある。我々はこれらスピンダイマー系物質が示す磁化曲線について、中性子散乱実験で観測されているマグノン励起と関係づけ、議論を行う。また最近、Oosawa et al. は TlCuCl3に関して、1.48 GPa の圧力下で圧力誘起磁気転移を確認した。我々はこれについても調べ、磁場・圧力誘起転移の類似点と相違点について議論する。これらの量子相転移は磁場・圧力によって比較的簡単に制御できるため、上記のスピンダイマー系物質は、量子相転移の研究を精密に行ううえで、極めて重要である。

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物理学科コロキウム(理工学部共催)
 

日時 2003年6月5日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 初田 哲男 (東京大学大学院理学系研究科)
題目 高温高密度における量子色力学の新展開 -- クォーク・グルオン・プラズマとカラー超伝導 --
講演要旨
相対論的重イオン加速器RHICの稼動により、宇宙初期に現れる高温物質クォーク・グルオン・プラズマの研究に新しい展開が生まれている。特に、量子色力学の相転移臨界温度(約170MeV)を越えた高温状態が生成されている証拠が蓄積されつつある。一方、高バリオン密度の量子色力学においては、カラー超伝導と呼ばれる新しい物質相の可能性が精力的に研究されている。これは、中性子星中心部やクォーク星の構造とも密接に関わっている。本講演では、これら高温高密度における量子色力学の理論・実験の現状について解説する。

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物理学科コロキウム
 

日時 2003年5月29日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 市川 能也 (上智大物理)
題目 3d 遷移金属酸化物における電荷秩序相の高電場応答
講演要旨
低次元構造を持つ酸化物の中には電子--格子相互作用により周期的な電荷分布が出現するものがある。これは電荷密度波(CDW)と呼ばれパルス高電場の印加により CDW 状態に凝縮したキャリアが集団的に運動して非線形伝導を示すことが知られていた。
一方3$d$遷移金属酸化物は $d$電子や酸素2$p$ホールの間の強い相関に起源を持つ多彩な物性を示し、非一様な電荷密度の空間分布が実現する``電荷秩序相''と呼ばれるユニークな状態もその一つである。
そこで電荷秩序相の中でも相転移温度近傍で比較的電気抵抗率が低く(10$^{-1}\Omega$cm以下)高電場印加が困難な系に対する応答を調べるため、薄膜試料と微細加工を用いた試料の高抵抗化に加えて短い時間幅の電圧パルスを発生する装置を作成した。高電場応答実験は銅酸化物高温超伝導体La$_{2-x}$Ba$_x$CuO$_4$で超伝導転移温度が特異的にゼロになる$x=1/8$組成とその近傍や、高原子価鉄ペロフスカイト酸化物Sr$_{2/3}$La$_{1/3}$FeO$_3$で電荷不均化転移が起こる温度近傍で行われともに非線形伝導が観測された。くみ上げた測定装置の概要および高電場印加測定結果について報告し、今後明らかにすべき課題を考察する。

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物理学科コロキウム(理工学部共催)
 

日時 2003年5月22日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 高柳 英明 (NTT物性科学基礎研究所)
題目 量子コンピュータ
講演要旨
量子コンピュータとは、量子力学をその動作原理とする、全く新しいタイプのコンピュータであり、ここ2−3年、世界中で研究が活発化している。それは、ある種の計算では、現在のコンピュータよりもずっと高速に計算可能であることが理論的に示されているためである。我々の研究室では、量子コンピュータを超伝導素子で実現することを目標に、超伝導体の小さなリングとジョセフソントンネル接合から構成される超伝導磁束量子干渉計(SQUID)を、量子コンピュータの基本素子である、量子ビットに用いる研究を行っている。講演では、まず量子コンピュータの簡単な解説を行った後、我々と世界の研究現状を紹介する。

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物理学科コロキウム(理工学部共催)
 

日時 2003年5月15日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 川辺 良平 (国立天文台・電波天文学)
題目 暗黒の宇宙を電波で探るアルマ計画
講演要旨
アルマ計画は、全部で80台の高精度パラボラアンテナ(口径12m、7m)を南米チリの標高5000mのアタカマ高地に建設し、直径14kmの巨大パラボラアンテナを干渉計方式で合成する巨大ミリ波サブミリ波干渉計計画である。日米欧3者の国際協力で建設し、2007年からの部分運用、2011年からの本格運用を目指している。ミリ波及び、未開拓のサブミリ波で、光では見えない未知の宇宙を描き、また宇宙の果てまで見渡すことにより、銀河や惑星系、またブラックホールなどの宇宙の基本天体の誕生の謎や、宇宙での物質進化を解明することを目的にしている。日本は現在、製作分担する予定のサブミリ波アンテナやサブミリ波受信機などの試作開発を進めている。セミナーでは、アルマ計画の概要と目指すサイエンスについて紹介する。

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物理学科コロキウム(理工学部共催)
 

日時 2003年5月8日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 栗田 敬(東京大学地震研究所)
題目 火星学の展開
講演要旨
最近数年間で地球の隣の惑星、火星に関する我々の知識は飛躍的に増大しました.これはMarsPathfinder,MarsGlobalSurveyor,MarsOdyssey といったNASAの一連の火星探査器ミッションの成功によるものです.明らかにされた火星の姿は同時にいくつかの興味深い謎を我々の前につきつけることになりました.最大の謎は「表層環境の急激な変動」です.火星の現在の表層部は水の三重点よりも低い圧力にあり、液体相の水は存在しません.一方表面に残された地形には河川、渓谷など流水の関与を示すものがあります.このことは過去に存在した大量の大気がどこかの時点で消え去った、ということを意味します.このようなことがどうして生じたのか、消え去った大気はどこへ行ったのか、一方地球では過去少なくとも35億年表層環境は極めて安定に保たれてきました.この違いは何に起因するのか、いまだ解決をみていないこの謎をいくつかの探査データに基づいて紹介したいと思います.

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日時 2003年1月9日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 本多 了(東京大学地震研究所)
題目 マントル対流の研究
講演要旨
地球(半径約6400km)は大きく、核(半径約3500km)、マントル(深さ約2900km)、地殻(数kmから数十km)にわかれている。この内、マントルと地殻は主に固体の岩石から構成されている。マントルは固体ではあるが、長い時間をかけると粘性流体のようにふるまう事が知られており、その粘性率は10**21Pa・sec程度と推定されている。また、マントルは核からの熱や放射性熱源の存在により暖められているために、対流が生じていると考えられている。これをマントル対流と呼んでいる。本講演では、このマントル対流についての概略、基本問題や最近の話題について触れる。

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物理学科コロキウム
 

日時 2002年12月19日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 鈴木 徹 (東京都立大学物理)
題目 トラップされた極低温ボーズ・フェルミ混合原子気体 − その励起構造と安定性 −
講演要旨
1995年にアルカリ原子気体における初めてのボース・アインシュタイン凝縮が実現されて以来、基礎物理から将来の応用までに関わる様々な側面で、トラップされた極低温原子気体の研究が急速に進展しています。最近では縮退したフェルミ原子気体の研究も進み、同時に、ボース・フェルミの二種の粒子の混合縮退気体も実現しています。
これらの系は1)ポテンシャルにトラップされた有限量子多体系であること、2)様々な外部パラメタが調整可能であること、3)フェッシュバッハ共鳴を利用して原子間の相互作用の符号や大きさを変化させることにより、自由粒子系から強相関系まで実現できること、などの特徴をもっており、量子物理学の視点からも理想的な実験室を提供しています。
本講演では、トラップされた原子気体についての実験的・理論的背景を述べた後、とくにボース・フェルミ混合気体に焦点をおき、その基底状態の特徴や集団振動運動についての理論的研究を紹介します。また、粒子間の相互作用が引力である系の安定性に関する検討を行ないます。ごく最近の実験でこのような系での崩壊(collapse)が観測されたという報告があります。崩壊現象のシナリオや、混合系の新たな相の可能性についても議論したいと思います。

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物理学科コロキウム
 

日時 2002年12月12日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 斎木 敏治(慶應義塾大学理工学部電子工学科)
題目 ナノの世界で光を操る
講演要旨
電子の量子力学的現象が顕著にあらわれ、また一方で根源的な生命現象が繰り広げられるナノメートルの世界を観察する上で、1ミクロン近傍に回折限界をもつ光学顕微鏡は必ずしも有用な道具とは言い難い。もっぱらの主役は、原子分解能をもつ電子顕微鏡やSTM、AFMなどのプローブ顕微鏡であり、ナノの世界の目や手として活躍している。しかし光を用いた観察は、これらの手法では決して得られない貴重な情報を数多く提供できるため、ナノ分解能をもつ光計測法が強く求められてきた。そこで登場したのが近接場光学顕微鏡(Near-field Scanning Optical Microscope; NSOM)であり、光の波長よりも小さな金属開口を通して光励起、信号集光をおこなうことにより、回折限界を克服したイメージングや分光測定を可能とする。実際には光ファイバを先鋭化、金属化した後、先端に開口を設けた探針(プローブ)を試料上で走査することにより、画像計測をおこなう仕組みとなっている。NSOMの分解能は基本的には開口の大きさで決定される。最近のプローブ作製技術の進展は目覚しく、再現性良く達成可能な分解能として10〜30nmという性能が得られている。
NOSMのこのような高性能化はさまざまな基礎研究分野に波及効果をもたらしている。例えば半導体量子構造分光においては、10〜30nmという分解能を達成することにより、従来とは質的にまったく異なる研究フェーズが開拓されつつある。具体的には、電子状態のコヒーレントな広がり(30〜100nm)よりも狭い領域に光を閉じ込めることにより、実空間において波動関数を可視化・制御することが可能となっている。さらに長波長近似のもとで成り立つ光と電子の相互作用のスキームは大きく変更を受け、遠隔場では遷移禁制な準位へのアクセスなど、新しい量子制御技術を提供する。
一方で、光は情報とエネルギーの伝達媒体でもあることから、NSOM技術は光通信、光加工、光記録などのテクノロジーへも積極的に取り入れられつつある。光記録を例にとると、単に小さな光スポットを利用して高密度光記録を目指すだけではなく、近接場に特有の偏光効果を積極的に利用することにより、高分解能かつ高コントラストでの光ディスクの読み出しが実現している。また、フェムト秒レーザを導入したナノアブレーションなど、超微細光加工への応用も、大きな展開が期待される重要な課題である。
本講演では、近接場の概念、NSOMの原理、要素技術の概説に続き、上に紹介した波動関数のマッピングや光ディスクへの応用などをお話したい。

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物理学科コロキウム
 

日時 2002年12月5日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 鹿野田 一司(東京大学大学院工学系研究科)
題目 分子性固体でひしめき合う電子がみる2つの世界
講演要旨
分子が凝集することによってそれまで分子の中に閉じ込められていた電子は分子をまたいで動けるようになる。しかし、分子性固体の電子集団は、電子相関(ひしめき合い)や舞台の低次元性のために、動く /止まるのぎりぎりの境界にいる場合が少なくない。分子配列を微妙に変えたり、磁場などの外部パラメーターを変化することにより、電子は集団としてこれら2つの世界を行き来できる。動くといっても、準粒子的流れ、集団的流れ、さらには超伝導という摩擦の無い流れなど幾つかの様がある。電子の止まり方にしても然りである。分子性固体は、このような電子集団の持つ様々な顔を物性物理として系統立てて調べることを可能にするモデル物質である。講演では、分子性固体の諸電子相の研究を”電子は動くか止まるか”という観点で整理し、分子性固体の研究が物性物理学にどのような新しい知見をもたらしたか、あるいは新しい問題を喚起したかという視点で解説を試みる。

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物理学科コロキウム
 

日時 2002年9月26日(木)
場所 9号館349室
講師 大熊 哲 (東工大・極低温物性研究センター)
題目 乱れた第2種超伝導体におけるボルテックスマターの物理
講演要旨
極低温で現れる超流動や超伝導は、量子力学の効果を巨視的スケールで我々に見せてくれる。一方、近年のナノテクノロジーは、量子力学の波動性と粒子性が重要な役割を演じる舞台を提供してくれる。本講義では、極低温、ナノサイズといった切り口から、量子力学が予想する一見不思議な現象を、最先端の実験成果を交えて紹介する。

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物理学科コロキウム
 

日時 2002年6月6日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 河合 誠之 (東京工業大学基礎物理)
題目 HETE-2 衛星によるガンマ線バーストの観測
講演要旨
ガンマ線バーストは宇宙遠方から数十秒間にわたって突然ガンマ線が降り注いでくる現象です。ガンマ線バースト本体は短時間で終わりますが、その後、数日で急速に減光していく残光がX線あるいは可視光などで観測されることがあります。その残光を調べることにより近年になって、その起源は非常に遠方の銀河内で起きる大爆発であることがわかってきました。
HETE-2 衛星は日米仏の国際協力によって 2000年10月に打ち上げられた小型の衛星で、現在も観測を続けています。その主たる使命は大気圏外で検出したガンマ線バーストの到来方向を迅速に地上に伝達し、追跡観測を可能にすることにあります。ガンマ線バーストに関する近年の研究と、HETE-2 による観測成果について講演いたします。

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物理学科コロキウム(理工学部共催)
 

日時 2002年5月30日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 五神 真 (東京大学物理工学)
題目 光で創る集団の量子現象
講演要旨
レーザーはその誕生からほぼ40年になるが、レーザー技術は最近でも著しい進歩を続けている。半導体レーザーを用いた周波数制御技術、チタンサファイアレーザーによる超短パルス技術、高出力レーザー技術の進歩はめざましく、10年前には極限技術であったものがごく普通の技術として研究室で利用できるようになった。レーザー技術を駆使して光を巧みに制御し、その光と物質の相互作用を通じて、物質の状態を量子論的にコントロールする研究がさまざまな分野で進められている。
レーザーは非常にボース縮重度の高い光子群を発生する装置である。光と物質の相互作用を通じてエントロピーの小さな光子群という性質を物質系に転化できれば、物質系を量子縮退した状態にすることができる。この典型例はレーザー冷却法によって作られる極低温原子ガスであり、その究極が、ボースアインシュタイン凝縮である。我々は原子や固体中の励起子や光励起キャリアをレーザー光によって巧みに制御し、低温高密度の状態にする実験を進めている。ここでは、アルカリ土類原子の量子縮退領域へのレーザー冷却実験、半導体の素励起である励起子分子波のコヒーレント制御、励起子モット転移による電子正孔液滴状態の生成、強相関電子系の非線形光学応答などについて紹介する。

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物理学科コロキウム(理工学部共催)
 

日時 2002年5月23日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 戎崎 俊一 (理化学研究所)
題目 巨大ブラックホールの作り方
講演要旨
銀河の中心に存在する巨大ブラックホール(太陽質量の100万倍以上の重さ)がどのようにできたかはこれまで謎に包まれていた。その種になる可能性が高い太陽の1000倍の重さを持つ中間質量ブラックホールが、スターバースト銀河M82で見つかった。これをきっかけに、巨大ブラックホールの形成の枠組が明らかにされようとしている。また、この過程は、銀河形成など宇宙の歴史のなかで重要な位置を占めることも分かってきた。本講演では、巨大ブラックホールの形成過程についての新しい枠組を提案し、その宇宙史に対するインパクトを議論する。

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物理学科コロキウム(理工学部共催)
 

日時 2002年5月16日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 青木 秀夫 (東京大学大学院理学系研究科)
題目 量子ホール効果の最近の発展
講演要旨
量子ホール効果は、異なる半導体の界面等に閉じこめられた2次元電子系において強磁場の中で起きる。特に分数量子ホール効果は、電子間の斥力相互作用により生じる強相関効果であり、「複合フェルミオン理論」(2次元空間に特有な一種のゲージ場理論、直感的には電子+磁束を複合粒子と見なす理論)も展開されている。高温超伝導体のような通常の相関電子系では相互作用が運動エネルギーと競合するのとは対照的に、量子ホール系ではランダウ量子化により運動エネルギーが欠如しているので全ては相互作用で決まるという特異な強相関極限にある。このため電子状態は、量子ホール液体(ここでは、超伝導、超流動と同様、ゲージ対称性が自発的に破れている)を初めとして、BCSペアリング状態、電荷密度波、磁性・非磁性転移、2層系に特有な対称性破れ等、多彩な量子相転移の舞台となる。このような最近の発展を分かりやすく解説したい。

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物理学科コロキウム(理工学部共催)
 

日時 2002年4月25日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 野本 憲一 (東大天文)
題目 超新星と元素の起源
講演要旨
この宇宙に、多種の元素がなぜ観測されているような組成比で存在しているのだろうか。多くの天体に共通した組成比をもつ元素もあれば、天体ごとに大きく異なる組成比を示す元素もある。「太陽組成」は決して「宇宙組成」ではないのである。このような元素の組成比は、当然原子核の性質を反映しているが、それだけでは説明できない。元素が宇宙の中でどのように合成されてきたかという歴史をたどってみる必要がある。すなわち元素の起源の解明は、さまざまな天体の形成・進化・爆発を解き明かすことでもある。本講演では、宇宙の進化の中で、どの元素が、いつ、どこで、どのような環境で合成されたかということがどこまでつきとめられてきたかを、理論と観測の両面からまとめてみたい。ビッグバンでは、軽元素のみが作られ、炭素より重い元素は星の内部で合成される。本講演では、星の進化と超新星爆発の理論的モデルとそこにおける元素合成過程の理論、および、その理論的予測が、超新星やその残骸の観測、多くの古い星の元素組成の観測によって、どこまで直接的に確認されてきているかを中心に話をする予定である。そのことによって、元素の起源の研究が、宇宙の初期にまで遡って、星や銀河の形成と進化の過程を解明する有力な武器となっていることを浮き彫りにしたい。

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物理学科コロキウム
 

日時 2002年4月18日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 鎌田 英彦(NTT物性科学基礎研究所)
題目 半導体量子ドットにみる量子力学
講演要旨
近年,ナノメータースケールの固体構造の作成技術が飛躍的に進展したおかげで,純粋に量子力学的な効果を固体においても観測できるようになった.半導体量子ドットはそうした人口固体構造のひとつの例である.量子力学の講義でお馴染みの粒子の束縛問題の単純な応用として半導体の量子箱を作ると,よく知られて
いるように,電子状態は原子様に離散化する.直接遷移型の半導体で量子箱をつくれば,このような状況に光に対する感受性を与えることができる.実際にIII-V族半導体で量子箱構造を作り,分光的な手法を用いて物性を測ると,電子と正孔の結合状態と見做される励起子がまさに原子のようなエネルギースペクトルと非常に大きな光感受率を獲得することが分かっている.本講演はこのように「どこにも行かない」原子において,量子力学の基本原理,すなわち
(1) 重ね合わせと干渉性,
(2) 観測時の波束の収縮と観測の確率解釈,
(3) ユニタリ時間発展(可逆性と確率の保存).
がどのように発現するかについての実験研究の結果について述べる.ただひとつの量子箱を観測する技術の進展のおかげで,我々は今や単一の半導体量子箱の中に,光子ひとつの励起でただひとつの電子-正孔対を作ることができる.こうした手法を用いることで,励起子の波動的な性質,例えば量子力学的な干渉効果を教科書通りに観測できる.また,ふたつの光子によってふたつの励起子をひとつの量子箱のなかに励起すれば,それは疑似的にヘリウム原子に似た状態となり,極めて量子力学な状態「エンタングル状態(絡み合った状態)」を作り出し,逆にこの状態が発光によってふたつの光子を発生することを利用すれば,最近話題になっている量子暗号に使う「エンタングル光子対」として利用もできる.特に最近の実験結果は単一の半導体量子箱の中に光子ひとつの励起でただひとつの励起子を作る方法の応用によって,「励起子が無い状態」と「励起子がひとつある状態」との重ね合わせを自在に作れることを示している.我々はもはや単一の量子状態の人為的な操作や制御を行えるようになった.今一度量子力学の基本原理,特にアインシュタインが気味が悪いと言った「観測時の波束の収縮と観測の確率解釈」を実験的に調べる手立てが整ったと言えよう.

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物理学科コロキウム
 

日時 2001年12月20日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 塚越 一仁 (理化学研究所)
題目 カーボンナノチューブの輸送現象の基礎研究と将来
講演要旨
カーボンナノチューブでは円周方向の伝導が量子化され一意的にチューブ軸方向の一次元伝導になると理論的に予想されている。しかも、その熱伝導度は極めて高くダイヤモンドに匹敵するとされている。このためエレクトロニクス材料として極めて魅力的な材料である。実際、この材料に対するエレクトロニクス応用に関して大きな関心が寄せられている。このナノチューブの電気伝導に関して現在実験的に明らかになっていることおよび明らかにするべききことを議論する。特に、サイズ効果を顕著に表す単電子効果や特有のスピン伝導の実験結果を中心にナノチューブでの伝導に迫りたいと思う。

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物理学科コロキウム
 

日時 2001年12月13日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 田中 昌司(理工学部・電気電子工学科)
題目 「思考回路」の研究は可能か?
講演要旨
脳の高次機能(思考、会話、行動制御など)は全て回路でつくられると我々(少なくとも私)は考えています。おそらく人格も、心も。たとえば、大脳皮質の前頭前野には、working memory 機能をベースとする思考プロセスを司っていると考えられる回路がある、という実験結果が現在蓄積されてきています。いわゆる思考回路です。ただし、思考のような高次機能は前頭前野内のローカルな回路だけでつくられるものではなく、大脳皮質のそれ以外のエリアや大脳皮質以外の部位にも及ぶグローバルな回路(ネットワーク)でつくられと考えるのが自然でしょう。詳細はまだわかっていません。脳の回路研究を進めるための重要な鍵は、脳の(とくに大脳皮質の)神経回路システムが極めて美しい構造をしているということです。したがって、我々は脳の回路を「読む」ことができるのではないかという希望があります。本コロキウムでは、最近私の研究室で始めたこの「回路を読む」試みをご紹介します。主な内容は、脳の解剖学的・生理学的基盤と脳のアーキテクチャ、神経回路モデル、working memoryに関連するコンピュータ・シミュレーション。最後に、精神活動の基盤としての神経回路ダイナミクスを調整する neuromodulators の働きについて触れる予定です。

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物理学科コロキウム
 

日時 2001年12月6日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 高田 康民(東京大学物性研究所)
題目 自己エネルギー改訂演算子理論
―多電子系の動的応答―
講演要旨
計算機の長足の進歩により,量子モンテカルロ法を始めとする多彩な理論手法で量子多体系の静的な物性が正確に分かるようになってきた.また,密度汎関数理論に基礎を置くバンド計算の改良によって固体電子系の第一原理計算の精度が上がってきた.これらの発展を見れば,基底状態に関する理論研究の大枠はこれらのアプローチの地平線上に見えるという楽観論もあながち嘘とは言えまい.
これに反して,励起状態の情報を含む電子系の動的な性質の理論研究に関しては,時間に依存した密度汎関数理論などのいくつかの注目すべき提案が既にあるものの,計算の信頼性のアセスメントも含めて,基本手法の開発すら大部分がこれからの問題といえよう.
本講演では,この電子系の動的応答の問題をグリーン関数法の立場で考える.この場合,1電子スペクトル関数$A({\bf p},\omega)$や動的構造因子$S({\bf q},\omega)$などの実験で測定される物理量を連続の式を含む各種の保存則を満たしながら正しく得るには,自己エネルギーとバーテックス補正を自己無撞着に計算しなければならない.
さて,このバーテックス補正の計算法に関して2段階から成る基本戦略を提唱している.その第一段では正確な自己エネルギーを不動点とする演算子${\cal F}$の存在を明確にし,全ての問題を${\cal F}$のそれに帰着
するもので,自己エネルギー改訂演算子理論と名付けた(YT, Phys. Rev. B {\bf 52}, 12708 (1995)).次に,第二段では使用可能な計算資源を考慮しつつ,物理的によく動機付けされた${\cal F}$の近似法を考えることである.この近似法の開発に関して,最近,一つの有効な手法を提案・実行した(YT, Phys. Rev. Lett. {\bf 87}, 226402 (2001))ので,それを報告し,併せて,$A({\bf p},\omega)$や$S({\bf q},\omega)$の計算結果をNaやAlでの実験結果と比較しながら議論する.

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物理学科コロキウム
 

日時 2001年11月29日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 柳下 明(物質構造科学研究所)
題目 基本分子の形状共鳴ダイナミックス
講演要旨
分子の内殻励起において、形状共鳴が発見されて以来すでに四半世紀が過ぎれいるにもかかわらず、そのメカニズムはいまだに良く理解されていない。本講演では、CO,CO2,OCS分子のC−K殻連続状態に現れる形状共鳴を例にあげる。そして、分子の対称性・サイズ・構成要素と形状共鳴ダイナミックスの関連を、分子固定の光電子の角度分布測定結果に基づいて解き明かしていく。

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物理学科コロキウム
 

日時 2001年11月8日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 平山 孝人(立教大理)
題目 希ガス固体における電子遷移誘起脱離
− 脱離現象を通して見る希ガス固体中での電子的励起・崩壊過程 −
講演要旨
希ガス原子は「不活性ガス」と呼ばれることが示す通り,それ自身単体で安定に存在する単原子分子である.その「不活性さ」から普通の環境では他の原子や分子との結合を作らないが,温度を下げていくと他の原子・分子と同様に液体や固体になる.その希ガス固体中に電子的な励起状態あるいはイオン化状態を作ると,「おとなしい」希ガス原子が,非常に反応性の高い希ガス励起原子・希ガスイオンに状態が一変し,周囲の原子と様々な反応を起こす.私は,このような反応の結果希ガス固体表面から脱離する粒子(原子・イオンなど)の観測を行っている.本講演では,低エネルギー(<100eV)電子および光子励起による希ガス固体表面からの粒子の脱離現象について,最近の研究結果を紹介する.

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物理学科コロキウム(理工学部共催)
 
日時 2001年7月5日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 秋光 純(青学大理工)
題目 新しい超伝導体MgB2 の発見物語

講演要旨
高温超伝導体の発見から15年近くが経った。この一連の物質は従来の金属と比べ、非常に高い超伝導転移温度をもつことが知られており、物理的にも新奇な物性を示すことから大変興味深い。しかしながら、酸化物であるために、微細加工しにくい、高い電流を流せないなど、応用上の障害ももちあわせている。
ところが、今年の1月、青山大学を中心とするグループによりMgB2という非常に単純な物質が40Kもの超伝導転移温度を示すことが明らかになって、世界中の物理学会を驚かせた。この発見で中心的な役割を果たした青山大学理工学部物理学科の秋光教授に、いかにしてこの物質を発見するに至ったかを講演して頂く。

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物理学科コロキウム
 
日時 2001年6月28日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 齋藤 俊行(放射線医学総合研究所)
題目 包括的な遺伝子発現解析へ向けた試み
講演要旨
分子レベルでの生物・医学研究分野では、永い間「個々の」遺伝子機能を探ってきた。そして現在、いくつかのモデル生物でのゲノム塩基配列決定とヒトゲノムシーケンシング段階が収束しつつあり、それらの成果を元に多数の遺伝子集団の挙動を網羅的に観察することが模索されており、対象のより深い理解が目指されている。このような取り組みを「genome」に呼応する捉え方として、転写レベルでは「transcriptome」、翻訳レベルでは「proteome」と呼ばれることもある。談話会では、私たちの研究グループが開発を進めるtranscriptome解析手法を紹介し、みなさまの議論を仰ぎたい。

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物理学科コロキウム
 
日時 2001年6月21日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 井元 信之(総研大)
題目 量子情報処理
−量子と情報が結婚して生まれたミュータント−
講演要旨
最近「量子コンピューティング」「量子暗号」「量子テレポーテーション」など、 量子力学の不思議な性質を積極的に利用する新しい情報処理の研究が盛んになりつつ ある。講演者は1992年にこの分野の研究を始め解説記事執筆を皮切りに1995年から主にPhys. Rev.誌やPhys. Rev. Lett.誌を中心にグループの研究を発表している。本講演はこの分野を物理の学生・院生向けに解説するものである。ただし数式や予備知識にあまり頼らず、物理以外の一般学生・院生も聴ける講演とする予定である。
まず「量子」のつかない情報処理から暗号、計算量の理論、マジックプロトコルに ついていくつかの話題を紹介する。これらのタスクは通常「量子」を使わずにどう処理されているか、その場合の問題点がどこにあるかを述べる。これらの問題点の解決を図ったりさらに新しいタスクを可能にするのが「量子情報処理」であるが、その準備として次に量子力学そのものについて述べる。すなわち「何が古典力学と異なる量子力学の本質か」であり、その性質こそが量子情報処理に使われる。そしてメイントピックスである「量子コンピューティング」「量子暗号」「量子テレポーテーション」「量子マジックプロトコル」について解説する。

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物理学科コロキウム
 
日時 2001年6月7日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 梶野 敏孝(国立天文台)
題目 ビッグバン宇宙論と原子核物理
講演要旨
すばる望遠鏡に代表される地上大望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡などの観測によって、深宇宙の構造が著しい勢いで明らかにされつつあり、いまや初期宇宙にまで遡って、膨張宇宙論や元素の起源論を定量的に検証できる時代を迎えた。宇宙は平坦で永遠に膨張するのか?加速膨張を説明する宇宙項の起源は何か?宇宙年齢問題は解決するのか?元素の起源論および力の対称性の理論と矛盾しないか?---これらの疑問に答えるためには、宇宙構造進化のシナリオを原子核・素粒子物理学と矛盾せずに構築することが求められている。講演では、初期宇宙の素粒子過程とビッグバン元素合成、宇宙背景放射ゆらぎ、銀河の構造形成の矛盾のない統一的な理解を目指す私達の理論研究の試みを紹介する。また、ビッグバン宇宙論と超新星元素合成理論との接点に位置する宇宙核年代学についての研究展開を紹介する。

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物理学科コロキウム
 
日時 2001年5月31日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 祖父江 義明(東大天文センター)
題目 銀河の回転とダークマター
講演要旨
銀河や銀河系の質量分布は、銀河円盤の回転速度(回転曲線)をつかって重力の法則によって求めることができる。回転速度の測定の方法と最新の観測結果、そして回転曲線から質量分布を求める方法とその結果について述べる。さらに、こうして求められた力学的な全質量を光学観測によって求められる星など「見える質量」と比較してみると大きなの食い違いがあること知られており、私たちは銀河や銀河系における「見えない質量、ダークマター」の詳細な地図を描くことに挑んでいる。ダークマター分布は銀河の骨格でもあり、銀河基本構造や形成のメカニズムを知る上で不可欠である。

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物理学科コロキウム
 
日時 2001年5月24日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 石川 征靖(東大物性研)
題目 重い電子系が示す多彩な低温量子現象
講演要旨
近藤効果は、もともと銅や金などの金属中の0.1%程度の微量磁性不純物が低温で引き起こす電気抵抗極小の現象で、局在磁気モーメントが伝導電子との間に働く負の交換相互作用によって低温で非磁性のシングレット状態になるために起ると理論的には解釈されている。そして、1964年近藤淳によって最初の理論的解釈が与えられて以来我が国でも理論・実験両面から精力的に研究がなされたが、その詳細については未解決の課題も数多く残されており、今でも典型的な強相関電子系の重要テーマのひとつとしていろんな観点から研究がなされている。
とりわけ、近藤効果によって局在磁気モーメントが消失して価数揺動(Valence Fluctuating, VF)状態になってゆく過程で起ると考えられている重い電子(Heavy-Electron, HE)状態や非フェルミ流体(Non-Fermi Liquid, NFL)状態、そしてその重い電子状態中で起る超伝導状態などは最近の興味深いテーマとなっている。本講演では、セリウムやウランなどの磁性イオンを含む化合物における、近藤効果と密接に関連した量子臨界点近傍で起こるこれらの低温量子現象について最近の話題を紹介する予定である。

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物理学科コロキウム(理工学部共催)
 
日時 2001年5月17日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 小林 誠(高エネルギー加速器研究機構)
題目 CP対称性の破れとB中間子
講演要旨
素粒子の標準模型において、最後まで残された課題がCP対称性の破れの問題であり,B中間子と呼ばれる素粒子を使ったその検証が注目を集めている。
講演では、反粒子、CP対称性などの基礎的な概念、CP対称性の破れの発見などについて解説をした後、素粒子の標準模型におけるCP対称性の破れのメカニズムを説明する。さらに、B中間子を使った実験的検証の原理と、高エネルギー加速器研究機構や米国のスタンフォード線形加速器センターで進行中の実験の現状について解説する。

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物理学科コロキウム(理工学部共催)
 
日時 2001年5月10日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 小柳 義夫(東大コンピューター科学)
題目 20年後のHigh Performance Computing
講演要旨
計算物理学は、モデルに基づいてシミュレーションを実行し、しばしば予期しない結果を導き出す。そのためには、高性能な計算機が必要である。この講演では、いわゆるスーパーコンピュータの歴史を振り返り、今後20年の動向をうかがいたい。
最近10年の傾向を外挿すると、2005年にはトップは80TFLOPSに達し、500番目の計算機でも1TFLOPSを越えることが期待される。
もしこの外挿を2020年まで延長すると、エクサフロップス(1018 FLOPS)が実現することが期待される。しかし、現在の技術の単なる延長でこれが可能とは思われない。しかしもし出来たとすれば、ペタフロップスのメインユーザがたちまち能力を使い尽くすであろう。なぜなら、例えば3次元のモデルでは、計算速度が1000倍になっても、系の大きさはせいぜい5〜6倍にしか出来ないからである。量子力学的なモデルなら粒子数の増加もせいぜいその程度であろう。
わが国では、2002年に40TFLOPSの地球シミュレータが完成することが予定されているが、それ以後の計画は何もない。HPCの分野は、市場原理に任せておいてよいものではなく、戦略的な投資が必要である。日本も、ペタフロップスを目指してプロジェクトをはじめるべきである。

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物理学科コロキウム(理工学部共催)
 
日時 2001年4月19日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 外村 彰(日立製作所)
題目 電子の波で見る量子の世界
講演要旨
電子は電気を帯びた小さな粒子ですが、同時に波の性質も持っています。この波の波長はきわめて短かく、たとえば10万ボルトに加速した電子は0.4pmと極めて短い波長を持っています。このため、光では原理的に見ることの出来ない小さな物体も、電子を使えば観察したり計測したりすることが可能になります。
私たちは、長年にわたってレーザー光のような``干渉性の良い電界放出電子線"を開発し続けてきましたが、それを用いてミクロの物体を新たに観察できるようになりました。実際この手法により、磁気テープに記録されたミクロの磁力線の様子を直接観察したり、これまで直接その姿を捉えることの出来なかった超伝導体中の磁束量子の動く様子を観察することが可能になりました。
ミクロの世界の極限計測が可能になっただけではありません。実際に行うことは出来ないが頭の中だけで考える量子力学の``思考実験"ですら実行可能になってきました。たとえば、電子を一つ一つ二重スリットに送った時に干渉縞が徐々に形作られていくという思考実験や、``電子の波は磁場に触れていなくても物理的な影響を受けることがある"というアハラノフ・ボーム(AB)効果の検証実験などが行われるようになったのです。
このミクロの世界を観察する手法は、今後さらに干渉性の良い電子線の開発に伴って、先端技術から基礎物理に至る広範な分野において、有用なツールとなることが期待されています。

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物理学科コロキウム
 
日時 2000年12月7日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 家 正則(国立天文台)
題目 すばる望遠鏡で見る遠宇宙
講演要旨
国立天文台がハワイ島のマウナケア山頂に建設し、調整を進めている単一主鏡としては世界最大の口径8.2mすばる望遠鏡はいよいよ2000年12月から一部共同利用を開始する。1999年1月のファーストライトからこれまでに得られた初期成果、望遠鏡の構造・原理、今後の展望について画像を中心に解説します。

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物理学科コロキウム
 
日時 2000年11月30日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 川村 静児(国立天文台)
題目 重力波検出なるか? TAMA300
講演要旨
人類初の重力波検出をめざして1999年夏に世界に先駆けてテスト観測を始めた日本の重力波アンテナTAMA300が、その後も改良・調整を重ね、ついにレーザー干渉計型重力波アンテナとして世界最高感度を達成した。現在の感度は、例えば連星中性子星の合体が我々の銀河の中心で起こったとして、そこから放出される重力波をS/N比20〜30で検出できるものである。2000年夏には2週間の連続観測がなされ、現在重力波の痕跡を探してデータ解析を行なっているところである。本講演では重力波の基礎から始め、重力波源、検出原理、そしてTAMA300の現状について詳しく説明をする。

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物理学科コロキウム(理工学部共催)
 
日時 2000年11月30日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 戸塚 洋二(東京大学宇宙線研究所)
題目 スーパーカミオカンデによるニュートリノ観測と最新の結果
講演要旨
1996年4月から5万ton水チェレンコフ装置スーパーカミオカンデは観測に入った。現在まで大きな故障もなく順調に観測が継続されている。研究テーマは、(1) 太陽ニュートリノ問題の解明、(2) 大気ニュートリノ問題の解明、(3) 陽子崩壊の探索が主なもので、幸運を狙って(4) 超新星ニュートリノバーストの常時モニターも行っている。
(2)の大気ニュートリノの精密観測から1998年、ニュートリノ振動の証拠を得たが、それ以降データが増加して、新しい知見が得られるようになっている。(1)の太陽ニュートリノ観測も4年に及び、すでに15000例のニュートリノ反応を得た。最新のデータは、太陽ニュートリノ問題の解に対して興味ある制限を与えている。また、(2)に関連して、つくば --- 神岡250kmにわたってニュートリノを飛行させ、ニュートリノ質量の実験的検証を昨年4月から行っている。6月に第1回の結果をまとめた。以上の点について、紹介を行いたい。

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物理学科コロキウム(理工学部共催)
 
日時 2000年6月15日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 山形 俊男 (東大地球惑星科学)
題目 エルニーニョの科学
講演要旨
エルニーニョやラニーニャ現象が頻繁に起きたり、93年の異常な冷夏、94、95年や99年には猛暑という具合に、地球の気候システムがどこか変調を来しているように見える。こうした気候変動を予測する科学と技術を高度化し、その成果に基づいて様々なレベルで広範な対策を早期に講じていくことが、人類の永続的な発展にとって欠かせなくなったといえよう。
1961年の国連総会におけるケネデイ米国大統領の演説を契機として、世界気象機関は気象の予測のための関連する科学と技術の推進を全会一致で決議した。その後、数十年の歳月をかけて世界気象を監視するシステムWorld Weather Watchが構築された。このWWWは観測システム、データ処理システム、通信システムからなるが、この先見的なWWWを基盤として、予報のための科学とコンピューター技術の発展のおかげで、私たちは日常的に天気予報の恩恵に浴している。ここで<気象>を<気候>に置き換えると、40年程前のケネデイ大統領の演説は極めて今日的なメッセージとして甦えり、私たちがこれから進むべき道を照らしてくれる。今や地球規模の気候観測システム、変動予測システム、そして気候変動の基礎科学の絡み合う、ダイナミカルな仕組みが必要になったのである。さらにその科学的予測の成果を活用し、社会経済活動に還元する方策も極めて重要な課題として登場してきた。
我々は気候変動を直接的には日々の天候の異常として感知するが、時間スケールの長い変動になればなるほど海洋の役割が重要になってくる。ここではエルニーニョの研究史を概観しながら、大規模な大気と海洋の相互作用の力学・熱力学を解説するとともに、新しい気候変動予測システムがもたらす社会へのインパクトについても触れてみたい。

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物理学科コロキウム(理工学部共催)
 
日時 2000年5月25日(木)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館349室
講師 谷畑 勇夫 (理化学研究所RIビーム科学)
題目 いま核物理はルネッサンス
講演要旨
原子核物理学が新しい局面を迎えています。これはRIビームを用いた研究が可能となり、寿命の短い原子核の性質や反応が研究できるようになったためです。教科書を塗り替える必要を示しているデータがいくつもでてきました。また、短寿命原子核の反応はビッグバン以降の宇宙の進化と共に作られてきた元素合成を地上における実験で確かめる方法を提供しました。今世界中でそれらの研究のしのぎが削られています。

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物理学科コロキウム(理工学部共催)
 
 
日時 2000年5月18日(木)3:15pm -- 4:50pm
場所 9号館349室
講師 齋藤 理一郎(電気通信大学・電子工学科)
題目 カーボンナノチューブの電子物性と応用
講演要旨
カーボンナノチューブの紹介と最近の応用研究に向けた技術開発と科学について概説致します。カーボンナノチューブとは何か、一般的な紹介をします。次にカーボンナノチューブの構造と電子状態、そしてラマン分光や輸送現象の特異な量子物性について紹介します。最後にナノチューブを未来技術へ引き渡す技術とは何が望まれているかご紹介したいと思います。
斉藤先生はカーボンナノチュウブが発見された初期から、この物質の新奇さと重要性にお気づきになり、勢力的に研究をされてきました。その御研究に昨年度のIBM科学賞が授与されておられます。皆さん、ふるって御参加下さい。

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