「次世代の電子デバイスに向けた強相関電子材料の開発」 「強相関電子系物質で新しい電子物性を開拓する」 電子は、電荷とスピンの自由度を持ち、半導体エレクトロニクスでは電荷のみを、磁気工学ではスピンのみを情報担体として活用しています。「強相関電子系物質」では、スピンと電荷の自由度に加えて、原子に束縛された電子が描く異方的な複数の軌道(電子雲)が第三の自由度として働き、結晶格子を歪めて電気抵抗を高くしたり、磁性や電気伝導に異方性を与えたりすることが期待されます。「スピン−電荷−軌道」の3つ自由度は互いに結合し、その結合の強さは精密な物質設計によって比較的自由に制御することができます。この「スピン−電荷−軌道」の3つが織り成す多彩で多様な複合現象が、電荷の自由度のみを用いている半導体材料には持ち得ない「強相関電子系物質」の潜在的能力・魅力と言えるでしょう。 我々の研究室では「強相関電子系物質」である遷移金属酸化物に注目し、これに系統的な物質設計を施し、その電子物性を精密に測定することによって、新規電子物性の開拓、およびその物性の解明を目指しています。ここでいう物質設計とは、物質から電子を抜いたり加えたり(キャリアードーピング)することや、電子の運動エネルギーを変化(バンド幅制御)させること、あるいは物質の結晶構造(次元性)そのものを変化させたりすることを指します。 また、「強相関電子系物質」では、多数の電子がお互いに影響を及ぼしあいながら存在しており、このとき、電子の集団はちょうど分子の集団が固体や液体や液晶の形態をとるように、量子固体−液体−液晶の間を、磁気的・電気的・光学的な性質を大きく変えながら相転移します。研究室では、この電子状態(量子固体−液体−液晶)を、磁場や電場、圧力、パルス光などの外場の印加によって変革する―電子物性の外場制御―を試みています。通常の金属状態とは異なり、種々の相互作用が競合する「強相関電子系物質」では、外部からのほんのわずかな刺激(外場)によって、その磁気的・電気的・光学的物性を劇的に変化させられる可能があり、外場制御によって未知の新しい現象が期待されます。 出典 : 上智大学理工学振興会 会報ソフィアサイテック2002 vol.13 |
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