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研究内容


現在の研究内容


1. 量子力学の多体問題について「応答関数」、「有効相互作用」および「密度汎関数理論」という概念をキーワードにした研究を行っている。 「応答関数」に関しては、研究対象となっている系は主に量子ホール系であり、研究の目標は、まず、量子ホール系の相図を密度とゼーマンエネルギーの関数として完成させることである。 特に興味深い2次の相転移による相境界の場合、その転移直前で励起モードのソフト化という現象が応答関数に現れるため、主にその関連において応答関数の研究を行ってきている。 「有効相互作用」という概念は、多体系の波動関数の複雑さ(の一部)を相互作用にくり込んだ概念であり、幅広い分野で様々な形で使われている。 当研究室では、それらの有効相互作用の統一的理解を目指した研究を行っている。 特に多重散乱を基礎にした有効相互作用に関しては、その基礎となる2体散乱の話に関して、R行列による記述を完全にすることに成功したばかりである。 この理論を非エルミートな有効相互作用として取り扱う場合への拡張を、現在推し進めている。 また、「有効相互作用」を微視的に作成していくことにより、「密度汎関数理論」におけるエネルギー汎関数についての知見が得られるため、その方向の研究も行っている。


2. 物理系において、原因を与えて結果を導き出す問題を順方向の問題(順問題)といい、逆に、結果から原因の形を推論する問題を逆方向の問題(逆問題)という。

逆方向の問題の議論は、1877年のRayleighによる”弦の固有振動からその弦の密度分布が求められるか?”という問いかけに始まる。 これは、Kacの"Can one hear the shape of drum ? "という有名なlectureで一般的に説明されている。 (この解はuniqueに定まらない。)

逆方向の問題は数学的のみならず、実用的にも重要であり、例えば、地震波の伝播の様子から地中の物質の分布、性質を推測したり、 電波をピラミッドに照射して出てくる散乱波からピラミッド内部の構造を調べたりするのにも使われてきている。

量子力学においては、一般にポテンシャルが与えられると、シュレディンガー方程式を解くことで散乱波が求まり、 観測量である散乱振幅や位相差を与えることができる(順問題)。 逆に、観測量である散乱振幅や位相差の情報からポテンシャルの形を推論する問題(逆問題)を逆散乱問題という。 当研究室では、量子力学的弾性散乱における逆散乱問題を扱い、研究を行っている。