宇宙物理セミナー(敬称略)


これまでの講演者リスト(敬称略)


ASTROPHYSICS SEMINAR
 

日時 2004年5月25日(火)4:00pm - 5:00pm
場所 3号館376室
講師 Patrick François (Observatoire de Paris)
題目 UVES Large Program First Stars : Abundance of heavy elements
講演要旨
39 night of UVES at the VLT have been allocated to determine the chemical composition of a sample of 35 extremely metal poor stars. During this talk, I will present the results concerning the detailed chemical composition of these "First Stars" from Carbon to Uranium. These reults will be discussed in the light of models of chemical evolution of the Galaxy.

連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 

日時 2004年2月12日(木)11:00am - 12:35pm
場所 3号館376室
講師 Matthias Liebendörfer (CITA, Univ. of Toronto)
題目 Neutrino Emission in Core Collapse Supernovae
講演要旨
Based on models implementing state-of-the-art general relativistic Boltzmann neutrino transport in spherical symmetry, I describe the expected thermodynamical conditions of nuclear matter in stellar core collapse and postbounce evolution. I try to disentangle different modes of neutrino emission, which are characterized by the emission rate, the diffusion time scale, or occur in adaptive equilibrium with the hydrodynamical evolution. In the comparison of simulations issued from a broad range of stellar progenitors between 13 and 40 solar masses I discuss differences and similarities in the early neutrino signal. Contradictory to observation, most simulations that adequately resolve the neutrino energy spectrum do not predict a supernova explosion in this mass range. Where are the models most sensitive to changes and how do conditions of matter change when the models are artificially enforced to explode?

連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 

日時 2003年12月19日(金)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館376室
講師 岩本 信之(東大天文)
題目 超金属欠乏大質量星におけるs過程元素合成
講演要旨
s過程(遅い中性子捕獲過程)は、鉄よりも重い元素を合成する過程の一つである。大質量星でのs過程元素合成では、質量数が60から90までの元素を主に合成することがこれまでの研究で示されている。しかし、観測的には連星系に属さないと考えられている超低金属量星においても、s過程の寄与があったことが分かってきた。この研究では、超金属欠乏大質量星の進化と、これに伴うs過程元素合成を計算し、大質量星におけるs過程の寄与を再評価した。その結果、質量数が90よりも大きい元素についても、超金属欠乏大質量星がs過程元素合成に寄与する可能性が出てきた。このような大質量星でのs過程が観測されている超金属欠乏星の組成に及ぼす影響などについて議論する。

連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 

日時 2003年11月28日(金)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館376室
講師 固武 慶(東大理)
題目 回転、磁場の重力崩壊型超新星爆発に及ぼす効果
講演要旨
重力崩壊型超新星爆発とは、大質量星がその進化の最終段階に迎える爆発現象のことである。大マゼラン星雲に起こった超新星1987Aからはニュートリノが検出され、神岡のグループがこの業績でノーベル賞を受賞した出来事は、現在発展の著しいニュートリノ物理学並びにニュートリノ天体学の始まりを告げただけではなく、重力崩壊型超新星爆発そのものの理解を大いに動機付けるものがあった。重力崩壊型超新星爆発はその他にも、元素合成、重力波、ガンマ線バーストなどの興味深い宇宙物理学的現象に関与しており、それを研究することで、宇宙物理学、素粒子物理学、原子核物理学などに於いて様々な知見が得られるという意味で重要な現象であることが知られている。
ところがその重要性にも関わらず、爆発のメカニズムは完全には理解されていない。具体的に言えば、詳細な数値計算にも関わらず爆発を再現できていないのである。爆発のメカニズムを解明するためには、従来から重要視されてきたニュートリノ加熱に加えて、何か他に鍵を握る現象があるのではないかと考えられている。その様な状況の中、我々は回転や磁場などの多次元の効果に注目して研究を進めている。本セミナーでは、最近の超新星の研究の動向を紹介した上で、我々が得た結果、その示唆について報告したいと考えている。

連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 

日時 2003年11月21日(金)4:00pm - 5:00pm
場所 3号館376室
講師 Qiu-he Peng (Nanjing University, China)
題目 Origin of High Speed of Neutron Stars
講演要旨
The speed up mechanism of neutron stars with high space speed is the one of very difficult theoretical research program which attracts theoretical physicists' and astrophysicists' attention.
Four classes of mechanisms for the natal kicks have been suggested. The majority of the proposed theories down to date is based on some physical or dynamics factor with some asymmetry on space direction on the very short time scale (100 ms--10 s) during supernova explosion (birth of pulsar or neutron star). These theories in itself have certain kind difficult or special requirement such as, a) the strength of magnetic field is as high as 10$^{15}$--10$^{16}$ Gauss or b) the initial asymmetry is too much for supernova explosion. The acceleration of the neutron stars may be got by recoil of electromagnetic radiation in less than one year after the pulsars were born according to the fourth model. But the fourth model is hard to be physical, because it's precondition is that the gravitational radiation role would be suppressed.
On the basis of the neutrino emission from the isotropic $^1$S$_0$ neutron superfluid vortexes in the neutron star interior (Peng, Haung and Huang 1982, A\&A, 107, 258), we propose a rocket model of neutrino jet for pulsar kick. It is shown not only naturally the gradual acceleration of the nascent pulsars is naturally shown in the time scale that the period of the pulsar increases from P$_0$ to 10P$_0$ (about 200--300 years), but also can get very nicely the huge natal kicks of neutron stars exceed 1000 km/s. We have contributed acceleration scenario of pulsars with different initial period and with different magnetic field. The results of the paper are as follows: a) The observed alignment of the pulsar kicks with their spinning axes may be interpreted. b) The initial periods of pulsar with velocity greater than 100 km/s are shorter than (2--3) ms, and the initial periods of pulsar with velocity greater than 1000 km/s are shorter than 0.8 ms. c) The shorter the initial period of pulsars is, the faster the pulsar velocities is, if the magnetic fields of the pulsars are the same. d) The stronger the magnetic field of the pulsar is, the faster the pulsar velocity is, if the initial period of the pulsars is the same. e) For two pulsars with same velocity, the initial period of the pulsar with stronger magnetic field is shorter than one of another pulsar with weaker magnetic field.

連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 

日時 2003年10月10日(金)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館376室
講師 吉田 直紀(国立天文台理論天文学)
題目 宇宙創成はじめの3億年
講演要旨
宇宙の構造形成の研究はこれまで、観測される現在の時点での非常に大きいスケールでの物質分布の研究が主流であった。しかし近年理論研究の最前線はより高赤方偏移、つまり宇宙が若かったころの話題へと移りつつある。特に、今年WMAP衛星によって発見された宇宙の早期再電離については近年理論的研究において大きな進歩があった。
現在ではビッグバンによって宇宙が生まれてから数億年後、水素とヘリウムからなる原始ガスから最初の星々がうまれはじめ、それらの星からの紫外放射によりまわりの中性ガスがイオン化されていったと考えられている。最近我々の研究グループはスーパーコンピューターを用いてこの再電離の過程の大規模数値シミュレーションをおこなった。セミナーではその最新の結果を発表する。

連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 

日時 2003年5月23日(金)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館376室
講師 小浦 寛之(理研/早大理工総研)
題目 原子質量公式から見た不安定原子核の性質
講演要旨
原子質量は原子核の持つ最も基本的な量であって,質量とエネルギーの同等性のために原子のもつ全エネルギーでもあり,またそれゆえに,原子核の安定性を決定し,その崩壊を支配し,反応の起こりやすさに決定的な影響をもっている.これまで多くの研究者によって約2500種の原子核が実験的に確認されてきているが,理論的にはそれ以外に何千種類もの原子核が存在しうるとされている.また,近年盛んになっている超重元素探索や,r過程元素合成に関わる中性子過剰原子核の性質の研究において,まず問題にしなければならないものが原子質量であり,原子質量公式はこれらを理論的に予測する手段となる.
今回のセミナーでは,我々のグループが作成した原子質量公式(KUTY公式)を解説する.KUTY公式は原子質量の殻エネルギーを球形単一粒子ポテンシャルをベースに計算するのが特徴で,他の最近のいくつかの質量公式より実験質量値との誤差が小さく,中性子魔法数20,28の中性子過剰核近傍でのquenchingなどを予測している.同時に現在利用されているいくつかの質量公式を紹介し,これらの質量公式が予測する不安定原子核の性質について,最近の実験結果と比較しながら議論する,そしてr過程元素合成予測や超重核の崩壊予測における質量公式の影響について述べる予定である.
また,KUTY公式を利用して,α,β崩壊半減期及び自発核分裂障壁,半減期を推定することが可能である.これらを用いてr過程元素合成と関連した話題について触れる予定である.

連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 

日時 2003年5月9日(金)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館376室
講師 嶋作 一大(東京大学天文)
題目 すばるで探る遠方の銀河の性質
講演要旨
遠方銀河の観測は銀河の形成と進化を解明する上で不可欠である。我々は「すばる望遠鏡」の広視野カメラを用いて赤方偏移が 4 以上 (最大で 6.6) の銀河を多数検出し、その性質を詳細に調べている。ここでは、銀河の光度関数と空間分布に焦点を当て、我々の観測によって遠方銀河についてどういうことがわかって来たかを述べる。

連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 

日時 2003年4月25日(金)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館376室
講師 渡辺 元太郎(東京大学物理)
題目 高密度天体における nuclear ``pasta" とその性質: 高密度天体内部物質が織り成す物質相の世界重力崩壊型超新星のメカニズム
講演要旨
超新星爆発とは、星の進化の最終段階において迎える大爆発のことで、星の最期を彩る非常にドラマチックな現象である。そして その中心部には、中性子を主成分とする極めて高密度な天体、即ち 中性子星が残される。超新星や中性子星といった高密度天体の性質並びにこれらの天体における諸現象を理解するにあたって、それらの内部に存在する高密度核物質の性質やそこでの原子核の状態を調べることを逸することはできない。しかも、これらの物質は実験室よりもはるかに高密度かつ中性子過剰な状況にあるため、常温常圧では見られないような新奇な相を示す。特に興味深いことに、中性子星内殻底部並びに超新星コアといった部分では、球状の原子核から一様核物質に融解していく中間の密度領域において、スパゲッティのような円柱状やラザニアのような板状の原子核がクーロン結晶を組んだ相、及び一様核物質に円柱状や球状の孔が空いたようなバブル状の相がエネルギー的に安定な状態として存在し得るという幾つかの予測が提出されている。このような非球状の原子核は nuclear ``pasta" と呼ばれているが、私はこの nuclear ``pasta" を通じて中性子星内殻や超新星コアについての生き生きとした現実の描像を提示することを目指して、高密度天体内部物質の研究を行ってきた。
本講演では、液滴模型による巨視的かつ静的なアプローチから量子分子動力学法による微視的かつ動的なアプローチといった、我々が現在までに行ってきた様々な視点からの nuclear ``pasta" の研究によって得られた知見を総合的に紹介することで、高密度天体内部の状況を垣間見る一助としたい。
主な内容としては、
1、高密度天体内部での核の性質の不定性と nuclear ``pasta" の普遍性
2、nuclear ``pasta" の形成、崩壊チャンネルとそれに対する安定性
3、nuclear ``pasta" と電子遮蔽効果
4、量子分子動力学法による nuclear ``pasta" の微視的研究
を予定している。

連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 

日時 2003年1月31日(金)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館352室
講師 山田 章一(早稲田大学理工学部)
題目 重力崩壊型超新星のメカニズム
講演要旨
重力崩壊型超新星は、太陽質量の約10倍以上の大質量星が進化の最後に起こす爆発現象である。SN1987Aにおけるニュートリノ観測により、そのメカニズムの大筋の理解が正しいことは確認されたものの、詳細な数値計算は未だ爆発の再現に成功していない。この講演では、理解の現状をまとめ、われわれのグループが重要だと考え今取り組んでいることについて紹介する。

連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 

日時 2003年1月24日(金)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館376室
講師 青木 和光(国立天文台)
題目 超金属欠乏星にみる元素合成過程
講演要旨
近年の超金属欠乏星の化学組成の観測は、銀河初期の元素合成の理解に大きなインパクトを与えている。これは、金属欠乏星は、ごく少数の(場合によっては単一の)元素合成過程の結果を保持しているためである。重元素の主たる合成過程である中性子捕獲に関して、最近の観測研究の大きな進展のひとつは、幅広い質量数領域の元素の組成の決定が可能になった点である。すなわち、中性子捕獲によってつくられる元素の組成の第三ピーク以降にあたる Th(r-過程の場合)、Pb(s-過程の場合)などが観測されるようになったのである。この結果は、それぞれの合成過程モデルに対する非常に厳しい制限をあたえるものである。さらに、今後大きな進展が期待されるのは、元素レベルの組成決定を越えて、同位体組成の測定に挑戦することであり、実際、端緒的ながら成果が得られつつある。星の組成解析の基本にも触れながら、これらの最近の成果を紹介する。

連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 

日時 2003年1月10日(金)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館376室
講師 飯田 圭(理研)
題目 Magnetic and rotational vortices in superfluid quark matter
講演要旨
We study, within Ginzburg-Landau theory, the responses of three-flavor superfluid quark-gluon plasmas to external magnetic fields and rotation, in both the color-flavor locked and isoscalar color-antitriplet diquark phases near the critical temperature. Fields are incorporated in the gradient energy arising from long wavelength distortions of the condensate, via covariant derivatives to satisfy local gauge symmetries associated with color and electric charge. Magnetic vortex formation, in response to external magnetic fields, is possible only in the isoscalar phase; in the color-flavor locked phase, external magnetic fields are incompletely screened by the Meissner effect. On the other hand, rotation of the superfluid produces vortices in the color-flavor locked phase; in the isoscalar phase, it produces a London gluon-photon mixed field. We estimate the coherence and Meissner lengths and critical magnetic fields for the two phases.

連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 

日時 2002年11月29日(金)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館376室
講師 坂本 強(総合研究大学院大学)
題目 球状星団系の形成と進化
講演要旨
球状星団系の力学進化について研究することは、球状星団系の形成や銀河形成とのつながりを研究する上で非常に重要である。近年、HSTや地上の大型望遠鏡の誕生によって、銀河系の球状星団だけでなく、系外銀河の球状星団についても観測が進んでいる。M31は、銀河系に最も近い銀河であるので、最もよく観測されている銀河の1つである。このM31と銀河系の球状星団系の比較から以下のことがわかっている。(i)付随する球状星団の数が異なっている。(ii)光度関数はともにほぼGaussianに近い形をしており、peakも一致する。(iii)金属量分布はともにbimodalな分布をしている。(iv)ともに金属量の多い球状星団は金属量の少ない球状星団に比べ、中心集中している。(v)ともに金属量の多い球状星団は回転している。(vi)銀河系の金属量の少ない球状星団はほとんど回転していないが、M31の金属量の少ない球状星団は回転している可能性がある。
一方、球状星団系の力学進化に関する理論的な研究は、非常に多くの研究が存在している。球状星団系の形成を研究するには、初期質量関数と運動を調べる必要がある。このうち、初期質量関数はよく調べられているが、運動についてはほとんど研究されていない。そこで、我々は球状星団系の力学進化を解いて、銀河系とM31の球状星団系の性質をよく再現するような初期質量関数と運動を研究し、いくつか提唱されている球状星団の形成シナリオについて制限する。本発表では、まず、力学進化を追う際に必要となる銀河系の質量を水平分枝星や球状星団、衛星銀河の3次元速度で制限した研究(Sakamoto et al, accepted to A&A, astroph/0210508)について紹介し、次に球状星団系の形成と進化の研究方針について発表する。

連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 

日時 2002年11月20日(水)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館356室
講師 児玉 忠恭(国立天文台理論)
題目 宇宙の進化を俯瞰する --- 銀河、銀河団スケールの星形成とアセンブリー
講演要旨
すばる望遠鏡は現在他に類を見ない30分角の広視野を誇る可視光撮像カメラ(Suprime-Cam)を持ち、数年後には、近赤外の広視野撮像分光装置(MOIRCSやFMOS)も続々と登場します。これによって、我々が今までハッブル宇宙望遠鏡(HST)などにより竹筒を通して垣間見ていた遠方宇宙を、魚眼レンズでもって俯瞰することができるようになったと言えます。
本講演では、これらのユニークな広視野観測装置を用いて、様々な時代の銀河宇宙を俯瞰し、銀河・銀河団スケールの形成・進化の様子を実証的に描写してゆく戦略を概説します。

連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 

日時 2002年11月15日(金)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館376室
講師 郡 和範 (東大ビッグバンセンター)
題目 Gamma-ray burst and neutrino-cooled accretion disk
講演要旨
γ線バーストのenergy発生機構は未だに解明されていない。しかし、短いtimescaleで莫大なenergyを放出することから、中心天体には降着円盤が形成されているだろうと推測されている。γ線のfireballはbaryon物質の少ない場所で形成されていなければならず、その発生機構は透過性の高いneutrinoが鍵を握っているのではないかと近年興味が高まってきている。
こうした興味の下、我々はneutrino冷却により安定に存在する降着円盤の解を見つけ出した。本講演では我々のmodel とγ線バーストの関係を紹介するとともに、放出されるニュートリノの観測可能性を議論する。

連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 

日時 2002年9月18日(金)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館376室
講師 北本 俊二 (立教大学理学部)
題目 X線パルサーへの質量降着流の観測的研究
講演要旨
連星X線パルサーは、超強磁場を持つ中性子星へ伴星から質量降着がおこりX線を放射していると考えられる。降着する物質は磁極に集中して落下し磁極がX線で特に明るく輝く。自転軸と磁持軸がずれていると、明るい磁極が見え隠れするので、規則正しい周期を持った明滅として観測される。
このような解釈はどれほどの根拠があるのだろうか?磁極への降着流はどのようになっているのだろうか?連星X線パルサーの代表であるケンタウルス座X−3を詳しく解析することにより、観測からこれらの疑問への答えが導かれようとしている。

連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 

日時 2002年6月28日(金)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館376室
講師 吉田 篤正 (青山学院大学理工)
題目 Gamma-ray bursts: current understandings, unresolved problems and current-future missions
講演要旨
1997年の残光(afterglow)の発見以来、ガンマ線バースト(GRB)と呼ばれる天体現象の少なくとも大部分は、宇宙論的遠方における大爆発現象であることが明らかにされてきた。これは、電波から高エネルギーγ線におよぶ広い帯域の電磁波による精力的な観測と、先見的な理論的研究によるところが大きい。とくに、8メートル級の大望遠鏡およびHSTによる可視光観測が、この分野の研究に長足の進展をもたらしたといえる。
現在、GRBは大質量星の崩壊時に発生するとする説がもっとも有力視されているが、その母天体、発生機構についてはほとんど未解明である。そればかりか、GRB のおよそ1/5をしめる、short-hardバーストについては、発生源の距離を含めて全く何も分かっていないと言ってよい。一方で、GRBを高赤方偏移宇宙を探るプローブとして使うという方法が注目を集めてきている。どちらの場合も、バースト後短時間でその位置を決定し、深い詳細な追観測を実行することが鍵となる。現在活動中のHETE-2衛星、それに続くSwift衛星等のX/γ線による位置決定・アラートシステムと、ロボット望遠鏡、大望遠鏡による迅速観測の連携が現在から将来において重要である。

連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 

日時 2002年6月21日(金)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館376室
講師 鈴木 英之 (東京理科大理工)
題目 原始中性子星ニュートリノとニュートリノ振動
講演要旨
近年、大気・太陽ニュートリノの観測から、ニュートリノ振動の存在が明らかになった。重力崩壊型超新星爆発の際形成される原始中性子星のニュートリノ放出に関する数値シミュレーションの紹介と、星の外層から真空を伝播する際のニュートリノ振動が、ニュートリノスペクトルにどのような影響を及ぼすのか、議論したい。

連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 

日時 2002年6月7日(金)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館376室
講師 藤田 裕(国立天文台)
題目 チャンドラで見た銀河団
講演要旨
米国が打ち上げたX線天文衛星チャンドラは、0.5秒という優れた空間分解能によって数々の成果をあげている。銀河団の観測においても、チャンドラは「単純な静かな天体」というこれまでの銀河団の常識を覆した。本講演では、チャンドラによる銀河団観測の最新の成果のレビューを行い、チャンドラの威力を発揮できた銀河団Abell133の詳細な解析結果について説明する。

連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 

日時 2002年5月17日(金)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館376室
講師 千葉 柾司(国立天文台)
題目 Cosmological Application of Graviational Lensing
講演要旨
重力場の周りでは光の軌跡が曲げられ、したがって重力場はまるで光学レンズのような働きをする。宇宙に点在する銀河や銀河団周辺でもこのような現象が起こり、重力レンズ現象と呼ばれる。特に、通常は見えないくらい遠方にある天体からの光を集めることができ、自然の望遠鏡として近年大変注目されている。本講演では、この重力レンズ現象を用いた以下の2つの研究成果を報告する。
(1)銀河の周りにある暗黒物質の構造、特に最近問題になっている冷たい暗黒物質の微細構造に対する制限。
(2)「すばる望遠鏡」によるレンズ系の観測に基づく宇宙論パラメータの決定。

連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 

日時 2002年4月12日(金)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館376室
講師 柴崎 徳明(立教大学理)
題目 Vortex Configurations, Oscillations and Pinning in Neutron Star Crusts
講演要旨
中性子星の内部は超流動、超伝導の状態にあり、量子化された渦糸や磁束管が内部を貫いております。また、星表面から少し内に入ったクラストの部分では原子核が格子状に並び、それらは中性子の海の中にひたっております。ここで超流体渦糸は原子核にピン止めされていると考えられます。そして、パルサーでみられるグリッチ(パルス周期が突然変化する現象)は、渦糸の集団的ピン外れがその原因と長年考えられてきております。ところが、最近、ピン止めは起きないという論文が提出され、熱い話題となっております。そこで私たちは、この問題に答えるため、超流体渦糸の平衡形状および渦糸に励起される振動について調べました。得られた形状や振動をもとに考察し、渦糸は原子核にピン止めされている可能性が非常に高いという結論に至りました。セミナーでは、中性子星の内部構造について最近の描像を述べ、その上で私たちの研究について紹介したいと考えております。

連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 

日時 2002年1月29日(火)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館376室
講師 Enrique Garcia-Berro (Universitat Politecnica de Catalunya)
題目 White dwarfs as fundamental physics laboratories
講演要旨
White dwarfs are well studied objects. The relative simplicity of their physics allows to obtain very detailed models which can be ultimately compared with their observed properties. Among white dwarfs there is a specific class of stars, known as ZZ-Ceti objects, which have a hydrogen-rich envelope and show periodic variations in their light curves. G117-B15A belongs to this particular set of stars. The luminosity variations have been successfully explained as due to $g$-mode pulsations. G117-B15A has been recently claimed to be the most stable optical clock ever found, being the rate of change of its 215.2 s period very small: $\dot{P}= (2.3 \pm 1.4) \times 10^{-15} {\rm s\, s}^{-1}$, with a stability comparable to that of the most stable millisecond pulsars. The rate of change of the period is closely related to its cooling timescale, which can be accurately computed. We study the pulsational properties of G117-B15A and we use the observed rate of change of the period to impose constraints on the axion emissivity and, thus, to obtain a preliminary upper bound to the mass of the axion. This upper bound turns out to be $4\cos^{2}{\beta}\; {\rm meV}$ at the 95\% confidence level. We also will review on the prospects to use this white dwarf to constraint the --- otherwise hypothetical --- rate of change of the gravitational constant. Although there are still several observational and theoretical uncertainties, we conclude that G117-B15A is a very promising stellar object to set up constraints on fundamental physics which could not be accessible otherwise.

連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 

日時 2002年1月25日(金)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館376室
講師 井上 進(国立天文台)
題目 高エネルギー非熱的現象から探る銀河・銀河団の形成と進化
講演要旨
現在の標準的な構造形成理論の枠組みでは、銀河や銀河団の形成と進化の様々な段階で、ガスの衝撃波加熱過程が極めて本質的な役割を果たしていると考えられる。この過程は必然的に高エネルギー粒子加速を伴うはずで、それが引き起こす非熱的現象は、他では得られない貴重な情報をもたらす可能性を秘めている。このような新しい観点からの研究として、主に以下の2つの研究を紹介する。
1)電波銀河による銀河団ガスの加熱とそれに伴う高エネルギーガンマ線放射 (Inoue \& Sasaki 2001)。銀河群・銀河団に観測される高温ガス成分の統計的性質を説明するためには、重力以外の何らかの加熱源が必要とされているが、我々は強いジェットを伴う高光度の電波銀河がその有力な候補となりうることを示した。この仮説は、衝撃波加熱の際に加速された電子が発するガンマ線をGLAST衛星等で捕えることにより、将来的に直接検証可能である。
2)我が銀河系形成時における構造形成衝撃波起原の宇宙線によるの生成 (Suzuki \& Inoue 2002)。我が銀河系のハローに属する金属欠乏星で観測される軽元素同位体リチウムー6の組成は、超新星起原の説明は困難であることが知られているが、我々は、銀河系の階層的構造形成に伴う衝撃波で加速された宇宙線の起こす核反応によって、これを自然に説明できることを示した。将来的には、「すばる」HDS等による金属欠乏星のリチウムー6の観測を進め、運動学的情報と組み合わせることで、我が銀河系形成時の力学的履歴を探ってゆくことが期待できる。

連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 

日時 2001年12月7日(金)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館376室
講師 梅田 秀之(東大理ビックバン宇宙国際研究センター)
題目 Pop III 重量星の進化、ハイパーノバ(極超新星)爆発と元素合成
講演要旨
PopIII星とは宇宙で初めに生まれた第一世代の星のことである。これらの星からの放射による初期宇宙の再イオン化は宇宙論のモデル検証において重要な役割を果たす。また近年「すばる」などにより詳細なデータが得られるようになってきた銀河ハロー内の超低金属星や高赤方偏移天体の組成、また銀河の化学進化などを理解するうえでPopIII星による元素合成を詳しく調べる重要性が増してきた。PopIII星を作るガスは軽元素のみで構成されているため、PopIII星の進化は特異的である。また最近の星生成理論によるとPopIII星は十〜百倍太陽質量を越える重量星の割合が非常に多かったのではないかと思われている。
我々はこのような重量星の進化、超新星爆発、元素合成の計算を行い、低金属星の組成の観測と比較をおこなった。その結果、超低金属星の組成は高エネルギー爆発した重力崩壊型超新星(ハイパーノバ)による元素合成で説明出来るが、普通のエネルギーのものや、更に重い太陽質量の130−300倍の星の終末の電子ー陽電子対生成不安定型超新星では説明出来ないことがわかった。これらの結果が銀河の化学進化や(極)超新星爆発メカニズムの解明にどのような意義を持つかという事について議論をおこなう。

連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 

日時 2001年11月9日(金)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館376室
講師 長滝 重博(東大理物理)
題目 Supernova Jets, GRB Jets and Implication of Iron Line in the X-ray Afterglow
講演要旨
GRBがジェット的な爆発を起こすことが割合一般的であると考えられているのには幾つかの根拠がある。例えば球対称的な爆発であるとすると、γ線のみのエネルギーですら1.0E+54ergを超えるものがあるという観測があり、ジェット的であれば爆発エネルギーを抑えることが出来る。
一方、いわゆる通常の重力崩壊型超新星爆発では、回転等の効果を入れるとジェット的な爆発を示すことが数値計算で示されている。そこで今回は、GRB ジェットとSupernovaジェットの類似点・相違点を考察した。結果として、GRB ジェットで要求される環境を作り出すためにはcentral engineのメカニズムそのものを変更する程(通常のneutrino heatingではなく、pulsar風で爆発させるとか、black holeのactivityを利用するなど)、大きな修正が必要なのではないかと結論された。
更に、GRB000214に代表されるような、X線afterglow中の鉄輝線の解釈についても考察を行なった。鉄輝線もジェット的な爆発の枠組で説明出来れば、よりGRBジェットという考え方がサポートされる訳である。一方、SN1998bwがTypeIc型超新星であることからもサポートされるように、GRB天体の周りには親星の質量放出によるcircum stellar mass(CSM)が10倍の太陽質量のオーダーで存在することが期待される。GRBがそのCSMを照射すればそこから鉄輝線がrecombinationprocessによって放出されることが期待出来ることを紹介する。
いずれのモデルがより妥当であるかを決定するのはどのような観測かということについても議論を行なう。

連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 

日時 2001年7月13日(金)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館376室
講師 村田 泰宏(宇宙科学研究所)
題目 スペースVLBI衛星「はるか」とVSOP計画の成果
講演要旨
我々は、1997年2月に、宇宙研のM-Vロケットにより打ち上げられた、世界初のスペースVLBIのための電波天文衛星「はるか」を利用して、スペースVLBI観測(VSOP観測)を行ってきた。現在、打ち上げから4年あまりがすぎ、AGNの観測を中心として様々な成果が出ている。講演では、「はるか」衛星、およびVSOP観測とその成果の紹介を行う。

連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 

日時 2001年7月6日(金)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館376室
講師 川辺 良平(国立天文台)
題目 アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計計画と
ALMAで探る宇宙の暗黒時代・太陽系の起源
講演要旨
アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計(ALMA)は、光学望遠鏡では見えない暗黒の星間物質をミリ波・サブミリ波で効率よく観測し、同時にハッブル宇宙望遠鏡を10倍程度上回る解像度を実現する。2006年頃にチリ5000mサイトで部分運用を開始し、また2010年頃から本格運用に移行することを目指して、日本・北米・欧州3者の国際協力事業として計画されている。ALMAは、光を放射しない極低温のガスや塵の観測を通じて、星・惑星系や銀河の誕生と進化の過程や、宇宙空間における物質進化など、天文学の最重要課題を明らかにする。2002年度(平成14年度)には、ALMA建設(9年間)の第1年次として, 建設費の要求を行なう予定である。ALMA計画の現状と、それによるサイエンスについてを概要する。

連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 
日時 2001年6月29日(金)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館376室
講師 中島 秀人(東工大社会理工)
題目 ロバート・フック ニュートンに消された男
講演要旨
ロバート・フックは、ニュートンとほぼ同時代に活躍した科学者である。しかし、彼の科学研究の内容で現在知られているのは、フックの法則と、生物の細胞の発見だけである。今回の発表では、実験科学者としての彼の姿、そしてその意義について論じたい。特に、彼の天文観測が、当時の時代の文脈の中では非常に高水準であったことを明らかにする。さらに、科学の「モード」の議論にもふれることができればと考えている。
連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 
日時 2001年6月15日(金)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館376室
講師 太田 直美(都立大理)
題目 X-ray Study of Distant Clusters of Galaxies: Structure and Evolution
(X線による遠方銀河団の構造と進化の研究)
講演要旨
これまでにASCA衛星およびROSAT衛星の両方で観測された80個の遠方銀河団(0.1<z<1)について、一様な解析方法を適用し、銀河団の構造(X線ガスの空間分布および温度)を調べた。解析においては、ASCAのX線スペクトルから銀河団ガスの平均温度を測定し、一方ROSAT/HRIのイメージから表面輝度分布のradial profileを求め、isothermal betaモデルおよび NFWモデルを用いてfittingを行なった。これにもとづいて遠方銀河団サンプルのX線パラメータのredshiftに対する依存性、およびそれらのパラメータ間の相関を検討した。これにより主に以下のような新しい結果を得たので報告し、銀河団の構造について観測的に課すことのできる制限について議論する。(1) 温度T, beta, コア半径r_c, 銀河団中心での電子密度n_e0 に明らかなredshift依存性は見られない。(2)銀河団のパラメータのなかで、r_cは1 桁以上のもっとも大きな銀河団ごとのばらつきを示す。その度数分布は、約60 kpc および220 kpcに2つのピークをもち、100 kpc程度の値をもつものが少ない。(3)X線光度と平均温度の関係いわゆるL_X-T関係のNormalizationに、コア半径の大小によって有意な違いがみられる。
連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 
日時 2001年6月8日(金)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館376室
講師 奥村 幸子(国立天文台)
題目 ミリ波サブミリ波における超広帯域観測とアタカマ大型干渉計計画
講演要旨
現在、世界で行われているミリ波サブミリ波観測の広帯域観測について簡単に紹介し、その中で、現在、我々のグループが取り組んでいる、超高速A/D変換回路の開発について具体的に説明する。これは、観測されたアナログ信号をデジタル信号に変換する装置であるが、この変換速度(の半分)が1つの装置で信号処理されるスペクトルの帯域幅に相当する。従って、アナログ信号に見合うだけの早いサンプリング速度を実現できれば、それだけ多くの信号の処理が可能になり、観測感度の向上につながる。セミナーでは具体的に、1ビットながら8GHzのサンプリングを実現し、スペクトルを取得した例をあげ、その精度・安定性等について簡単に解説する。その後、現在信号中の、回路の高集積(LSI)化を目指した取り組みを紹介する。
最後に、上記のような最新の技術を集め、今まさに建設を開始しようとしている、アタカマミリ波サブミリ波大型干渉計計画の概要と目指すサイエンスや達成感度について報告する。
連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 
日時 2001年6月1日(金)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館376室
講師 松尾 宏(国立天文台)
題目 野辺山45m鏡によるSZ効果の観測
講演要旨
1997年より、野辺山45m鏡を用いたSZ観測が精力的に行われている。これまでに、10個以上の銀河団が観測され、大部分の天体でSZ効果が検出され、いくつかの天体でSZ効果の画像が得られるようになってきた。
今回のセミナーでは、SZ観測がどのようにして行われているのか、成果として何が分かってきたかを中心に、SZ観測の現状について紹介する。
また、今後どのような観測装置でSZ効果の観測を行おうとしようとしているのか、なども紹介したい。(ASTE計画、フーリエ干渉形を用いた開口合成法など)
連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 
日時 2001年4月20日(金)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館376室
講師 Timothy C. Beers(Michigan State University)
題目 Observational Constraints on the Nature of the r-process in the Early Galaxy
講演要旨
We discuss the existing database of stars which might be used to explore the nature of the astrophysical r-process site(s), and suggest new surveys which can quickly identify the most imteresting and important metal-poor stars, such as those with large r-process overabundances, that can be used for cosmo-chronometry. A summary of the elemental abundance patterns in the recently discovered Uranium-rich star CS 31082-001 will be made. Comparisons of the expected abundance patterns for r-process elements based on several viable theories will also be presented.
連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 
日時 2001年4月13日(金)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館376室
講師 近田 義広(国立天文台)
題目 レンズアンテナで超大口径電波望遠鏡を目指す
講演要旨
【大きな望遠鏡が欲しい】 電波望遠鏡の大きさは現在、限界にきている。観測波長の約1万倍を越える口径の望遠鏡は、重力、風、温度分布の不均一に抗して鏡の面精度を波長の10分の一以下という精度に保つことが出来ない為である。受信機の感度も物理的な限界に近づきつつある現在、より大きな集光面積を実現できなければ、21世紀の電波天文学は壁に突き当たってしまう。たくさんの望遠鏡をつなぎ干渉計で集光面積を稼ぐ方法もありうるが、相関器始め、システム全体の複雑さが増えて得策でない。この壁をkm級のレンズアンテナ望遠鏡で一挙に打ち破る方法を探る。
【反射式ではもう限界】 自動車のルームミラーは車が揺れると揺れて,鏡を通して見えている景色もガタガタ揺れる.しかし,眼鏡は鼻の上で多少揺れても眼鏡レンズを通して見えている景色は大して揺れない.つまり,反射望遠鏡の凹面鏡の支えに比べ,透過型の望遠鏡のレンズの支えはいい加減でよい.焦点とレンズ中心を結ぶ直線さえ正しく目的天体の方を向いていれば多少レンズが傾いてもいいし、対称性から考えて折れ曲がったり、あるいはグニャグニャに曲がっていてもいい――即ち面精度もいい加減でよい.
【遅延でなく位相を合わせて電波を集める】 しかし、普通に厚みのあるレンズではkmクラスの大きさのものは作れない。遅延を得るための光学的「厚み」を実際の材料の厚みで実現しようとすると鏡と同じように3次元の加工が必要になってしまうからである。普通のレンズは、開口面内の厚みの分布=遅延の分布で電磁波に対する遅延が焦点で等しくなるようにして集光する。遅延は位相ズレを周波数で割ったものであるから、遅延は位相のズレで置き換えることが出来る。つまり、開口面上に多数のphase shifterを並べ、焦点で電波の位相がちょうど合うように、phase shift量の分布を作ってやれば、レンズが実現できる。電波の位相差を作り出すには、例えば,電波の通り道に波長の半分前後の長さの金属の細い棒を置くと,その棒の長さによっていろいろな位相差を作り出せる.そういう棒を長さを適当に選びながら,レンズ面にあたるところにいっぱいに並べてやれば「位相差レンズ」ができる.
【薄い膜に導電塗料で印刷】 そういう金属棒をいっぱい並べるのは容易に出来る.食品ラップみたいな薄い膜に,金属粉の入った導電塗料で棒を印刷してやれば良いのである.食品ラップでも厚みは数十分の一ミリであるから,さらに薄い膜を使えば、1km四方で数トン程度で済む可能性さえある.これは大口径衛星搭載電波望遠鏡の可能性を示唆するものである。
連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 
日時 2001年2月2日(金)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館376室
講師 Dr. Gerhard Boerner (Max-Planck Institut)
題目 News from the Big Bang
講演要旨
Recent measurements of the anisotropies of the cosmic microwave background have revealed a maximum at about 0.5 degrees. This means that the universe is flat, its expansion is accelerating, and will go on forever. This is also supported by measurements of the Hubble law for distant supernovae. The cosmic density is equal to a critical density, and therefore in addition to normal matter, dark matter, there must be a dominating dark vacuum energy or cosmological constant. In the talk the measurement, its interpretation in terms of physical processes connected with cosmic sructure formation, and the consequences for basic physics will be discussed.
連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 
日時 2000年12月15日(金)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館376室
講師 石丸 友里 先生(東大天文)
題目 銀河系誕生期の星形成史から探る重金属の起源
講演要旨
宇宙に存在する炭素よりも重い元素(以下、金属)のすべては星によって合成さ れた。ビッグバン直後には水素などの軽元素しか存在しなかった宇宙から、銀 河が誕生し、星が生まれてはその死と共に金属を放出することによって、金属 量は徐々に増加してきたのである。即ち、金属量の低い星ほど過去の銀河の姿 を留めていることになる。我々の銀河系のハローには、太陽の約1000分の1と いう非常に金属量の低い星が多数観測されているが、これらの金属欠乏星こそ が銀河系の誕生後間もない時代の情報源である。
金属欠乏星の最大の特徴は、化学組成比が非常に大きく分散することにある。 これは、形成期の銀河系では星間ガスが十分に混合していなかったため、 星の重元素は単一もしくは数個の超新星爆発のみで合成されたことを示唆する。 そこで、超新星爆発の衝撃波に起因して星形成が起こり、超新星残骸と混合し た星間ガスから次世代の星が形成されるという、新しい銀河系ハローの化学進 化モデルを構築した。このモデルでは、個々の超新星爆発の元素合成の違いが どのように星の化学組成比の分散に現れるかが調べられる。
特に、鉄よりも重い元素(以下、重金属)の起源に着目する。金属欠乏星 の重金属の分散は顕著に大きいことから、その起源が特定の星にある ことが示唆される。ユーロピウムや金・プラチナなど、重金属の大半はr過程 (速い中性子捕獲)で合成されるが、元素合成理論からはr過程が起こる星の質 量は未だに不確定である。しかし、銀河系ハローの化学進化モデルから予測さ れるユーロピウム、バリウム、ストロンチウムの化学組成の分散を金属欠乏星 の観測データと比較した結果、r過程の起源となった星を限定できた。さらに、 ストロンチウムの化学組成の分散が他に比べ著しく大きいという観測事実をも とに、r過程の起源が2種類存在する可能性について議論する。これらの研究成 果は、すばる望遠鏡に搭載される高分散分光器HDSによる金属欠乏星の観測に よって、近い将来検証されるであろう。
連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 
日時 2000年11月17日(金)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館376室
講師 中島 紀 先生(国立天文台)
題目 過去5年間の brown dwarf 研究の展開
講演要旨
Brown dwarf (褐色矮星)の存在は、1960 年代に予言されていたが、確かな brown dwarf は、1995 年になってやっと発見された。最初の brown dwarf グリーゼ 229B は、黒体輻射とは、かけはなれたスペクトルを持ち、メタン、水蒸気の吸収バンドが大気の透明度を決めていた。大気の点からも、グリーゼ 229B は、星と木星の中間的存在であったのである。1999 年になると 2MASS (2 Micron All Sky Survey)、SDSS (Sloan Digital Sky Survey) といった広域サーベイが多数の brown dwarf を発見するようになりあらたな スペクトル分類が提唱されるにいたった。OBAFGKM の続きとして、 L, T があらたに加えられた。現在では、100 以上の L dwarf と 10 以上の T dwarf が知られている。
談話会では、brown dwarf の進化、内部構造、大気についてふれたのち、観測の現状と、今後の問題点について述べる。
連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 
日時 2000年11月8日(水)3:15pm - 4:50pm
場所 9号館359室
講師 北山 哲 先生(東京都立大)
題目 Sunyaev-Zel'dovich効果と宇宙論
講演要旨
Sunyaev-Zel'dovich効果は、宇宙空間に存在するプラズマが宇宙マイクロ波背景放射光子を散乱して、背景放射スペクトルに歪みを生じさせる現象であり、特に遠方宇宙に存在する銀河団、大規模構造などの強力な観測手段となっている。ここでは、現在著しい進展を遂げつつあるSunyaev-Zel'dovich効果の観測について、我々が進めてきた多波長・高分解能観測の成果を交えつつ報告する。また、これらの観測が持つ宇宙論的な意義について、大域的ハッブル定数の決定、構造形成論の検証、マイクロ波背景放射ゆらぎへの寄与、などに焦点をあてて議論する。
連絡先:和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 
日時 2000年10月13日(金)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館376室
講師 望月 優子 先生(理化学研究所)
題目 中性子星グリッチの起源を説明する新しい『核の棒』モデル
講演要旨
中性子星にグリッチと呼ばれる現象がある。これは、それまで非常に正確に自転のスピードが遅くなっていた中性子星が、あるとき突然スピンアップするという現象である。このグリッチという現象が最初に観測されてから30年あまり経つが、その起源はよくわかっていない。講演者らは、一般に広く受け入れられている「渦糸のなだれ的ピンはずれ」説*)により、グリッチの起源を説明する、はじめての微視的モデルを構築した。
我々のモデルでは、2つの点において、新しい概念を提唱する。ひとつは、中性子星内殻の、ある特別な場所で、超流動渦糸に沿って『核の棒』が形成されるということである。『核の棒』は、捕らえた渦糸を完全にその場所から動けなくし、そこに渦糸の堆積をもたらす。ふたつめは、堆積した大量の渦糸間の斥力の扱いについて、今までなされてきた連続体近似に加え、局所的な渦糸密度に依存する補正を導入することである。次第に押し寄せてくる渦糸からの斥力によって、『核の棒』に捉えられていた渦糸が、雪崩のようにはずれるのがグリッチである、という理論を提唱する。
講演では、『核の棒』の形成のダイナミクスを中心に据えながら、グリッチモデルの全体像について議論する予定である。
*)上智大の伊藤直紀先生はこの説の提唱者のひとりである


連絡先 和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 
日時 2000年7月21日(金)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館376室
講師 鳥居 研一 先生(宇宙開発事業団)
題目 X線観測で探るパルサー
講演要旨
最近のX線観測により、超新星残骸に付随した年齢が10000年以下の若い回転駆動型パルサーがいくつか発見された。これらの天体の観測から、中性子星形成時の自転周期やキック速度等について興味深い結果が得られつつある。従来、若いパルサーの研究はCrab PulsarやVela Pulsar等の少数の代表的な天体に依存しており、観測事実が一般的な物理現象なのか、個々のパルサーの個性なのか良く分からなかったが、今後、多数のサンプルから、より一般的な性質を導くことができると考えられる。
また、超新星残骸に付随した中性子星は回転駆動型パルサーだけでなく、ソフトガンマ線リピータ、特異なX線パルサー(Anomalous X-ray Pulsar)等、超強磁場を持つ中性子星(Magnetar)と考えられる天体も見つかってきた。
本セミナーでは1993年に打上げられたASCA衛星の観測結果を中心に、これらの中性子星の観測の進展をお話したい。
また、ミリ秒パルサーからのX線パルスの検出、多数の質量降着型パルサーの発見の話題にも触れたい。
ASCA衛星は現在も観測を続けており、いずれの項目の研究も日々更新されている。それぞれの観測結果の理論的な解釈も今後更新されると考えられるが、現状報告という形で観測結果を提示したい。


連絡先 和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 
日時 2000年7月14日(金)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館376室
講師 住吉 光介 先生(沼津高等専門学校)
題目 超新星爆発とrプロセス:不安定核物理のチャレンジ
講演要旨
超新星爆発は重い星の進化の華々しい最後であるとともに鉄よりも重い元素、特にrプロセス元素を作る場だと考えられている。しかし、その爆発メカニズムやrプロセス元素合成の様子は未だに明らかにはなっていない部分があまりにも多い。我々は、最近、実験可能になった不安定核のデータを元に最新の相対論的核子多体理論を駆使して、超新星爆発の解明の一つの鍵を握る、極限状態での核データを系統的に予測することを行っている。特に数値シミュレーションで必要不可欠な状態方程式のデータテーブルを構築した。さらに、このデータテーブルを用いて、鉄のコアの重力崩壊、原始中性子星からのニュートリノ駆動風、rプロセス元素合成の数値シミュレーションを行っているところである。特に、ニュートリノ駆動風のシミュレーション結果からは、rプロセスが確かに起こりうることが明らかになってきた。こうした最新の核物理から超新星物理へのチャレンジの様子とその結果をお話したい。


連絡先 和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 
日時 2000年6月30日(金)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館376室
講師 岩本 弘一 先生(日大理工)
題目 遠方のIa型超新星を用いた宇宙パラメータの決定
講演要旨
Ia型超新星は, 非常に明るく光度が一様であることから, 理想的な標準光源として宇宙論パラメータの決定に利用されてきた. いくつかの超新星サーベイ・グループによる結果が最近相次いで発表され, ハッブル定数\(H_{0}\)および密度パラメータ\(\Omega_{m}, \Omega_{\Lambda}\) の値により強い制限が得られるようになっている. 密度パラメータの値にはまだ大きな不定性が残されているが, 宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の非等方性の観測による結果と組み合わせると, よい制限がつくことが明らかになった. Ia型超新星を用いた宇宙パラメータ決定の原理と例を紹介し, 考慮すべき要素(Ia型超新星の明るさのばらつきと系統的進化, 宇宙の非一様性)などについて簡単に議論する.


連絡先 和南城 (03-3238-3345)

戻る


ASTROPHYSICS SEMINAR
 
日時 2000年5月26日(金)3:15pm - 4:50pm
場所 3号館536室
講師 折戸 学 先生(国立天文台)
題目 天文観測による宇宙に存在するバリオン数、レプトン数の制限
講演要旨
宇宙に存在するバリオン数はビッグバン元素合成の理論と観測から強い制限が得られます。バリオン数の生成を素粒子の理論で説明することはいまだ成功していませんが、レプトン数の生成を伴ったバリオン数生成のモデルが精力的に調べられています。また、Super KAMIOKANDE によるニュートリノの振動と質量の存在の証拠から、宇宙初期にレプトン数が存在していた可能性が強くなっています。今回は、バリオン数、レプトン数が元素合成をふくめた天文観測から非常に強く制限されることを示したいと思います。現在の天文観測と、今後打ち上げられる、宇宙の背景輻射の揺らぎを観測するMAP, PLANKが素粒子論を研究するうえでいかに重要かについても話したいと思います。


連絡先 和南城 (03-3238-3345)

戻る