Surface Science Laboratory of Sophia University

可視光応答型光触媒の開発

可視光応答型光触媒の開発


本項では、坂間研究室が現在取り組んでいるテーマの一つ「可視光応答型光触媒の開発」についてご紹介します。

 

【研究目的】
 可視光下で高活性を示す光触媒を開発する

 

【研究方法】
*PLD法を用いて、金属-非金属共ドープTiO2試料を作製する
*試料評価はX線光電子分光(XPS)とX線吸収微細構造(XAFS)で行う
*光触媒活性の評価は、エタノール分解反応の速度を比較することで行う

 

【研究内容】
 遷移金属イオンMがドープされたアナターゼ型TiO2は、PLD法によって酸化物基板上に層状成長させる。MドープTiO2をアンモニア高気流中で焼鈍し、N-M-TiO2を作製する。

 

 XPSを用いてN-M-TiO2試料の電子状態を観測する。XPSスペクトルから、ドープ元素の量および化学結合状態を評価する。また価電子帯近傍を測定し、バンドギャップ中に形成されるN由来のアクセプタ準位とM由来のドナー準位を観測することで、補償効果の発現を確認する。XAFSではドープ元素のK吸収端やL吸収端を測定し、それぞれの原子の配置や価数、周囲の構造対称性、近接周囲原子の種類と配置などの局所的情報を得る。ドープ元素の配置や価数を知ることで、ドープ元素が適切な置換サイトにドープされていることを確認する。
 XPS, XAFS測定は高エネルギー加速器研究機構放射光利用施設(KEK-PF)のBL-3B, 11B, 13B等で行う。

 

 また、N-M-TiO2試料表面にUHVチャンバ内でエタノールを吸着させ、XPSでC1sピークを確認する。然る後に酸素雰囲気で試料に可視光を照射し、光触媒作用によるエタノールの分解反応を起こす。Cピークの時間変化を観測することで試料の触媒活性を評価し、最も活性が高まるドープ条件を割り出す。

 

【本研究の特色、独創的な点】
 共ドープTiO2の先行研究では、試料の作成法が液相成長法に偏っていた。しかし液相成長法では試料に不純物が多く含まれ、含有元素量の精密な制御が困難である。気相成長法を用いてドープ元素量を精密制御し、共ドープ試料に補償効果を発現させることで可視光下における触媒活性の飛躍的な向上が期待される。

 

【関連する研究の中での本研究の位置づけ】
 完全な補償効果が発現する共ドープTiO2試料を作成したという報告は未だない。ドープ元素量の精密制御により可視光下での高触媒活性を実現することで、高機能光触媒の新たな可能性を開拓することができる。

 

【本研究が完成したとき予想されるインパクト及び将来の見通し】
 光触媒は環境汚染を解決する有力な手段として期待されている。人工光合成の研究にも応用が見込まれることから、「地球温暖化やエネルギー問題を根本から解決する夢の技術」といわれている。高機能光触媒を開発することで、人類が抱える社会問題の多くを解決し、「持続可能な開発」を実現させることが期待される。


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